さてシロバナネコノメソウだが、ハナネコノメソウとの区別が難しい種だ。三重県レッドデータブックを見ると、いずれの種も記載されていないので、絶滅危惧種に上げられていないことがわかる。
まず植物図鑑の元祖的存在の、「牧野 新日本植物図鑑」(北隆館)で調べてみる。すると、ハナネコノメソウ(chrysosplenum stamineum)は取り上げられているが、シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)は掲載されていない。chrysosplenumは、ネコノメソウ属のこと。同じく北隆館の「原色牧野植物大図鑑」も同じで、シロバナネコノメソウは扱われていない。それでは山渓ハンディー図鑑はというと、ハナネコノメソウやキバナハナネコノメソウの母種がシロバナネコノメソウという扱いになっている。学名を見てみる。
シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)
ハナネコノメソウ(chrysosplenum var.stamineum)
キバナハナネコノメソウ(chrysosplenum var.flavum)
となっている。 var. がつくということは、変種であるということを表しているので、シロバナネコノメソウが母種であることになる。
まず記述の詳しい、牧野新日本植物図鑑でハナネコノメソウについて調べてみる。
●ハナネコノメソウ ユキノシタ科 ネコノメソウ属
花猫の目草:花の白さが特に著しく感じるのでこの和名がつけられたようだ。
【生育地】
関東および中部の山間の谷川の縁に生える多年草:牧野図鑑
福島県から京都府に分布:ハンディ図鑑
生育地に関しては、地域的なものや、山間の谷川の湿地については一致している。一方シロバナネコノメソウは、分布域が近畿地方、中国地方、四国、九州となっている。ちょうどこの三重県のあたりで分かれていることになる。昔から西と東は、関ヶ原で分かれるようだが、植物に関しても、同じようなことがいえるのかもしれない。
【茎】
花茎は、高さが5センチ内外。直立して頂端部に花序がある。その他の茎は花が終わってから根の近くから出て、四方に伸びる。黒っぽい紫色を帯び 細くて水分を多く含み軟らかく白色のちぢれ毛がある。
鈴鹿南部で撮影2007/3/17
【葉】
小型で葉柄がある。一般に対生であるが、時に互生も混じる。円卵形。鈍鋸歯。黒っぽい緑色。
【花】
花茎の頂端に、2、3個の花がまばらにつく。早春の頃開く。花弁はなく、ガク片が白色で4個。直立し鐘状に開く。ガク片は長蛇円形で先端は鈍形。縦の脈がはっきりと見える。おしべは8個。花糸は細長くガク片より長く直立している。やくは、紫黒色の点状。めしべは1個で、花柱は二つに分かれる。さく果。
シロバナネコノメソウ(母種)ハナネコノメソウ(変種)
分布近畿地方、中国地方、四国、九州福島県から京都府に分布
花期4,5月3,4月
花
ガク片は斜開し、先がとがる
やくは、暗紅色。
ガク片は、まるみがあり先はとがらない
やくは、暗紅色。牧野では、紫黒色。
茎 走出枝は暗紅色を帯びる
葉扇円形で鈍鋸歯が6〜9個卵円形で、葉の鋸歯は3〜7個
総合的に判断してみると、花がシロバナネコノメソウで、茎と葉は、ハナネコノメソウの特徴を備えているようだ。母種が少しずつ変化していると見ることができる。