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■小槍、孫槍、曾孫槍、大槍(北アルプス)
〜小槍の上でアルペン踊りを踊りましょう〜

レポート No.755
日時:2013年9月21日22日23日
参加者:隊長、うさぎ  7名

21日 新穂高温泉駐車場(10:25)〜穂高平小屋(11:26)〜白出沢出合(12:45)〜滝谷(14:35)〜槍平小屋野営場(15:40)
22日 槍平小屋野営場(3:50)〜千丈乗越分岐(5:40)〜千丈乗越(6:20)〜槍の肩(7:50)〜小槍取付(8:20)〜小槍のピーク(9:13)〜小槍のコル(9:40)〜曾孫槍ピーク(10:00)〜孫槍ピーク(10:35)〜槍ヶ岳山頂(11:05)〜槍ヶ岳山荘(11:50)〜飛騨乗越(12:35)〜千丈分岐(13:50)〜槍平野営場(15:50)
23日 槍平野営場(6:15)〜滝谷(7:05)〜白出沢出合(8:40)〜新穂高温泉駐車場(10:05)〜鈴鹿(15:30)


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プロローグ 槍ケ岳の標高は3179mで奥穂高岳に次ぐ日本で第4位の高峰。特徴のある三角錐の頂はどこから見てよくわかり、登山者ならずとも一般的によく知られ、知名度は非常に高い。槍ヶ岳の開山は1828年、播隆上人によってなされたことは広く知られていて、新田次郎の小説「槍ヶ岳開山」に詳しい。人気山岳である槍ヶ岳は四方に尾根を張り出し、一般登山道の表銀座、裏銀座、奥穂へ続く稜線コース、バリエーションルートの荒々しい北鎌尾根などが知られている。昭和に入ってから加藤文太郎、松なみ明などの有名な登山家が冬季登攀で命を落としたのはこの北鎌尾根だった。しかし岩稜登攀ルートとなると、多くのバリエーションルートを擁する隣りの穂高連峰と比べるとはるかに少なく、槍ヶ岳周辺や北鎌尾根の仙丈沢側、硫黄尾根にあるがあまり登られていない。日本登山体系「槍ヶ岳・穂高岳」によると、槍ヶ岳周辺は歴史が古く、ゲレンデ化していた歴史があったようだが最近では、クライマーの姿は殆ど見られない。ネットで検索すると、山岳ガイドによる小槍登攀の企画があるようだが、小槍登攀の2ピッチだけにわざわざ、槍ヶ岳に登ってくるクライマーは少ない。


大槍から見下ろす、左から順に、孫槍、曾孫槍、小槍

 小槍南面登攀は、左ルート(W+A1)、中央ルート(W+A1)、右ルートの三本が、日本登山体系で紹介されているが、現在ではコルから登る右ルートが一般的だ。確かに右ルートは岩も安定しているW級程度のいいルートだが、重い登攀具を担ぎ上げてきてこの2ピッチで終わるのはもったいない。そこで今回は、日本山岳体系にも紹介させている、小槍から大槍(槍ケ岳本峰)に延びる西稜を繋げて登ることにした。稜線上にある小槍、曾孫槍、孫槍、大槍のピークを順に踏んでいくと、ちょっとしたアルパインルートになる。

プラン   小屋を利用して荷物を軽くすれば、1泊2日でやれる行程だが、3連休を有効に使いゆとりのあるプランにした。小屋の利用も考えたが、紅葉の始まる時期に差し掛かっていて混雑が予想され、また、費用がかさむこともあり、飛騨から入り槍平利用のベースキャンプ型のテント2泊とした。上高地から入る場合は、槍沢あたりにベースを構えると適当で、標高差は有利になるが、歩行距離が長くなり、シャトルバスを使うなどアプローチも面倒になる。
 装備はテント泊装備にクライミング装備が加わる。重量配分はほぼ等分になり、テント泊装備のザックを2個分を担ぐ計算になる。標高が3100m以上と高いので、極力クライミング装備を減らすよう、ロープはシングルロープ1本にするなど工夫したが結局、クライミング装備だけで8kgになった。

アプローチ 初日は新穂高温泉から槍平までと距離的には約8キロだが、新穂高温泉の標高が900mなので、槍平1900mまで標高差約1000m。半日あれば十分な行程なので鈴鹿の自宅を初日の5時過ぎに出発し新穂高温泉に到着した。想定通りこの時期の無料駐車場は満車で有料駐車場に車を入れた。観光地なので駐車料金は6時間500円、3日間で4500円支払うことになった。因みに、上高地から入るとバス代が二人で4000円かかる。

   
新穂高温泉有料駐車場              穂高平小屋

準備を済ませ駐車場を10時30分に出発した。一か月ぶりの大きな荷物なので足腰が重い。時間は十分にあり、気温が高いのでスローペースで歩く。穂高平小屋に1時間で到着、木陰に入って火照った体をクールダンし、軽く昼食をとった。林道歩きは白出沢まで続く。白出沢では再び、笠が岳と穂高を見ながら大休止。

   
笠ケ岳               白出沢出合

白出沢出合いからは蒲田川右俣谷に沿った樹林帯の登山道に入る。日差しが強いので日陰の登山道はありがたい。適度に小休止を入れながらマイペースで高度を上げていく。2時間歩いてやっと滝谷出合に到着した。この辺りまで来ると疲れがピークに達し、木陰で大休止をとった。谷に降りて滝谷を見上げると、雄滝と滑滝の背後に北穂高の岩峰が迫っている。威圧感を感じると同時に、アルピニズムの魂をくすぐられる景観に一瞬、立ちすくんでしまう。

   
穂高岳                ダイモンジソウ

    
滝谷出合              北穂高岳


北穂高岳 滝谷ドーム

滝谷で最初に思い浮かぶのが、井上靖の小説「氷壁」の終盤に描かれた、滝谷への四の単独登攀だ。その印象が強いので、滝谷は険悪で特別な谷と思えてしまう。この滝谷の登攀史をみてみると、大正14年の夏、2パーティーによる別ルートからの当時初登攀の記録がある。RCCの藤木九三と早大の小島六郎の2パーティーだったようだ。藤木九三については、滝谷を渡ったところの岩壁にレリーフが埋め込まれているので登山者によく知られている。

   
藤木九三のレリーフ

滝谷ドーム 北穂高岳の岩壁に中央には今年敗退した滝谷ドームがそびえ立っている。アプローチのために下降したルート、尾根の乗越から懸垂、テラス、1ピッチ目のクラック、降雨のために敗退しピッチなどを目でおっていると記憶が鮮明に蘇ってきた。

   
槍平から見上げる北穂高岳           ナラタケ

槍平テントサイトは、三連休の初日とあって盛況だった。個々は何度か通過しているが野営するのは初めてだった。蒲田川の渓流の音が聞こえる河原のテントサイドだ。色とりどりのテント村が出来ていたがまだまだスペースはあった。河原に近い方にテントを設営し、小屋で受付を済ませた。水場とトイレが近くまずまず快適なテントサイトだった。

   
岩手の岳人            南岳

岩手の岳人がキノコナベ 岩手の岳人がキノコ鍋を囲んでいた。うさぎがそれを見付け話しかけると、食べていきなさいと、しょっつる仕立てのキノコ鍋を振る舞われた。キノコはナラタケで来る道で採ってきたらしい。キノコと山談義に花が咲き記念撮影。テントサイトの楽しい一幕だった。岩手の岳人、明日は山頂を往復し帰路につくらしい。我々の計画を話すと、夫婦でクライミングとはうらやましい、ということだった。

   
テントサイト

明日の天気は午前中は晴れ午後曇りの予報だったの予定より早く出発することにし、日没と同時に横になった。


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