■穂高連峰(北アルプス)2009年8月15,16日 No.502 隊長 | 15日の1 | 15日の2 | 16日の1 | 16日の2 | 北穂へ 雨のテントをたたく音で目が覚めた。まだ1時だった。「また雨か」。しかし、大きな天気の崩れはなさそうなので、それほど心配ではなかった。のどが渇いたので水を飲み、雨を音を聞いているうちに再び眠ったようだった。お隣がテントをたたむ音で目が覚めた。時計を見ると4時前だった。テントの外を見ると雨が上がり、雲の切れ間から月が見えていた。天気は大丈夫のようだ。ガスもない。ならば、「北穂経由で下山することにしよう」。帰りの高速道路の渋滞が懸念されるので、できるだけ早く出発したい。所要時間は、北穂まで2時間半、涸沢までの下山に1時間40分。横尾までが2時間。それから先が上高地まで3時間。合計9時間だ。パンとスープで簡単に食事を済ませ、テントを撤収した。雨に濡れたテントがやけに重く感じられた。パッキングを終え4時45分、一夜お世話にあった野営場を後にし、唐沢岳への登りにかかった。 涸沢岳 登山者の大部分は奥穂へと登っていったようだ。早朝、ヘッドランプの列が山頂へとつながっていた。北穂へ向かう登山者は少数派だ。20分ほどで涸沢岳に到着すると、カメラを携えた登山者が二人、しきりに撮影に勤しんでいた。朝焼けこそ見逃したが、早朝というのは光の加減で、山容がコントラストを増し撮影には絶好の条件が整っている。ザックを下ろしじっくりと朝の眺望を楽しみたいが、これから北穂までのルートを考えると、悠長に構えてもいられない。カメラのファインダーを覗きながらも、これから通過しなければならない岩稜のことが気になった。 涸沢槍 昨年はこのルートを逆コースで歩いている。雨とガスのため、ただルートをトレースしただけだったが、最低コルから涸沢岳への登りがきつかったような印象が残っている。雨に濡れた岩に足を取られないよう注意しながら5時15分、下降を始めた。まずは凹んだ岩場の急降下から始まる。岩に打ち込まれたボルトと鎖を頼りに、慎重に下っていく。岩はしっかとしているので、3点支持さえ確実にやれば全く問題はない。涸沢のカールが真下に見えているのでかなりの高度感がある。この辺りが岩峰の醍醐味だ。これを降りきると一旦傾斜がゆるむが再び、涸沢槍の辺りで鎖やはしごが連続するようになる。飛騨側のD沢へ降りていくような感じだ。この辺り岩がもろく、不用意に岩につかまないよう注意する。先行者がコルあたりを通過しているようだ。また岩くずの堆積には絶対に乗らないようにする。白ペンキの目印を忠実にたどれば問題はない。 最低コル 最低コル手前は岩くずが多くて不安定だ。特に先行者がいるときは落石は御法度。落とされるのも、落とすのも絶対にいけない。最後まで気を抜かずにやっと最低コルまで降りた。「最低コル」と書かれた錆びた標識が目印となっている。 さて、最低コルからは登りに転ずる。ここまできてようやく青空が覗き始めた。アルプスはやはり青空に限る。少し登ったところで後ろを振り返ると、越えてきた涸沢岳と涸沢槍の荒々しく険悪な岩稜がくっきり見えていた。通過してきたハシゴや鎖場を確認できた。岩場に咲くイワギキョウが心を和ませてくれた。 氷壁 最低コルからのルートは、飛騨側の岩壁を巻くようにつけられている。白いペンキを目で追っていくとこれからのルートがよくわかる。ここまで来ると北穂からの登山者と行き交うようになった。直下は滝谷だ。滝谷といえば、小説「氷壁」の登場人物の「魚津」が遭難したのがこの滝谷だったことを思い出す。この落石の巣のような所を登るんだから、かなりのリスクがあるはず。岩くずで埋まる谷を見れば明からだ。 |
2009年8月17日 Copyright (C) 2009 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |