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北岳、間ノ岳(南アルプス)2009年7月4日5日 No.498 隊長
〜キタダケソウを見に北岳へ〜
最後の最後まで天候判断に悩んだ末、決行を決めた。低気圧が前線を引き上げることもわかっていたし、低気圧の通過後に寒気が入るのもわかっていた。問題はどの程度前線が上がり、どの程度の寒気が入るかだ。前線の雨は我慢できるが、寒気に伴う雷雨は危険だ。しかしこの時期にしかキタダケソウは咲かない。梅雨期の天候判断は難しいが、結果としてはいい花見ができた。
【第1日目7月4日】北岳 4日のコース 天気図
仙流荘バス停(6:00)〜バス〜(7:00)北沢峠(7:20)〜バス〜広河原(7:56)〜大樺沢コース分岐(8:21)〜(10:08)白根御池(10:22)〜二又分岐(12:21)〜P2890m(13:05)〜(13:38)肩の小屋(14:04)〜(14:49)北岳3192m(15:05)〜吊尾根分岐(15:22)〜自生地〜吊尾根分岐(16:21)〜北岳山荘野営所場(17:27) 9.5km +1950m -650m
【第2日目7月5日】間ノ岳 5日のコース 天気図
北岳山荘野営所場(4:50)〜中白根山3055m(5:30)〜(6:36)間の岳3189.3m(6:50)〜(7:31)三峰岳2999m(7:45)〜P2699(8:31)〜P2488(9:20)〜野呂川越(9:51)〜(10:20)両俣小屋(10:30)〜(12:31)野呂川出合(12:35)〜バス〜北沢峠(13:00)〜バス〜仙流荘バス停(13:55)〜自宅(17:35) 18.5km +1100m -2200m


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プロローグ キタダケソウがまた、見たくなってきた。振り返れば前回、北岳を訪れたのは3年前のことだった。その時は念願のキタダケソウは見られたが、バスが不通になり北沢峠から広河原まで林道歩きを強いられたことが印象に残っている。また、あまり天候に恵まれず、展望のない山行だったことも思い出される。花見が目的だが、やはり高山ならではの醍醐味は、眼前に広がる胸のすく展望が楽しめることだ。不完全燃焼に終わったことで、次回の山行計画を温めてきた。
 しかし、キタダケソウが咲く時期は梅雨の真っ直中で、その間隙の好天をねらった週末の山行はなかなか実現できるものではない。今回も梅雨前線北上と低気圧の通過があり、山行の直前まで決行を躊躇することとなった。初日は低気圧の接近に伴い前線が北上するとのことだが、北岳までは上がらないだろう、また、二日目は寒気が入るが、低気圧はそれほど大きくなく、位置的には内陸部なのでそれほど影響は出ないだろう。その結果、4日の午後にチャンスがきた。


仙流荘前バス停

アプローチ 高速道路の週末特別割引は庶民の味方だ。この利点は大いに活用すべきだ。
 二日間の静岡出張から帰宅し慌ただしく出発の準備をした。2,3日前から準備を始めると食糧計画など必要十分に準備ができるが、慌てて準備をすると余計な物までザックに詰め込んでしまいがちだ。途中で給水できる水まで詰め込んでしまい、ザックが17キロ、カメラ等が2キロ、合計19キロとなった。
 20時過ぎに自宅を出発した。特別割引の恩恵にあずかるためには、翌日の土曜日の0時過ぎに伊那ICを出なければならない。予定通り、川越ICから入り湾岸から東海環状の土岐で中央高速にスイッチ。特別割引制になってから、深夜ではあるがマイカーが多くなっている。急ぐこともないのでゆっくりと走って駒ヶ岳SAで仮眠することにした。23時過ぎにSAに入るとマイカーやトラックで溢れていた。休むには静かな場所がいいが、選択の余地すらなかった。車がひっきりなしに出入りするので、その騒音がうるさいが、後席を倒し荷室で横になるとすんなりと眠ることができ、予定通り3時半に目が覚めた。サンドイッチで簡単な朝食をし、伊那ICを降りて目的地の戸台へ向かった。


北沢峠

北沢峠 順調に走り、4時過ぎに仙流荘前の駐車場に到着した。天候が芳しくないにも関わらず、多くの登山者で賑わっていた。雨がぽつりぽつりとあたっていた。往復切符(片道手荷物ありで2、400円)を買い列に並ぶ。南アルプス林道バスは30人乗りの小型バスなので、登山者の数に応じて増便してくれる。6時の始発便は当然登山者の数が多く2台以上の編成となり、最初のバスに乗ることができた。といっても今度は、北沢峠でバスの乗り換えがあるので、結局20分の待ち時間がある。北沢峠までは多くの人が運んだが、それから広河原に向かったのは、たったの4人だった。前回来たときはこの北沢峠から広河原までが落石のために通行止めになり、2時間半あまりの林道歩きを余儀なくされ、登山口になったときにはすでに消耗していたことが思い出された。どうも10mm以上の降雨があると不通になることが多いようなので、そのときに備え山域を変更するなど、それなりの覚悟が必要だろう。

  
左:広河原の野呂川に架けられた吊り橋   右:大樺沢コース分岐

樹林帯のコース 広河原からの登路は3本ある。大樺沢は、二俣からが雪渓歩きになり、展望さえ良ければ登路としてはいいコースだが、白馬の大雪渓と同じく落石のリスクがある。この日は山の上部がガスに包まれているので、どのコースでもいいが、雨になると樹林の中のコースがいいので、前回と同じく分岐を右に進んでの樹林帯を行くことにした。分岐からは樹林帯の尾根コースで、まずは標高差600mの急坂が待ち構えている。寡黙になること1時間30分、ひたすら登る。20キロの荷が肩に食い込んでくる。気温は高くはないが湿気があり、汗が噴き出してきた。傾斜がゆるむとトラバース道になり、足取りも軽くなり、しばらく歩くと白根御池小屋に到着した。


尾根コースの登山道

  
白根御池小屋          白根御池

白根御池小屋 白根御池小屋に到着すると先行している登山者が休憩していた。テント場にはふた張りテントがあった。少し空腹をおぼえたので、おにぎりを一つ食べ、中盤の600mの登りに備える。小屋周辺にはミヤマキンポウゲやサンリンソウが咲いていた。仙流荘から同じだったご夫婦と三河からの単独男性も、ベンチに座り休憩中だった。


草すべりの花畑 シナノキンバイが満開だった

草すべり さて、白根御池小屋からは二つのルートがある。時間的にはどちらも同じで、所要時間は3時間。草すべりで合流する。先ほどのご夫婦と単独男性は二又コースを選択したようだ。私は前回、石を落としてきた猿はいないかと、それを確かめるべく直登コースを選択した。残念ながら猿には会えなかった。
 いつものことだが、2500mラインを越えると酸素不足を感じるようになる。小屋の標高が2236mで稜線の標高点が2890mなので、この間の登りが最も厳しく感じる。アルプス山行に備えて徐々に高所に順応させてきているが、一年ぶりの高所になるので、体は直ぐに順応できない。高山病の軽症状である頭痛がしてきた。心肺機能や筋力は準備ができているが、低圧はどうも苦手である。少しペースを落とし大きく息を吸い込むようにする。二又からの合流地点までは、サンリンソウが途切れることなく咲いていた。ハクサンチドリやサンカヨウ、タカネグンナイフウロは少数派で、この時期の花としては種類はそれほど多くはない。シナノキンバイがちらほら見られ出すと草すべりは近い。
 約2時間で草すべりに到着した。高山の常連である、シナノキンバイ、ハクサンイチゲが見事な大きな花畑を作っていた。この時点でまだガスはとれないが、ザックを下ろしてカメラ片手に花見をする。先ほどのご夫婦もちょうど到着したようだ。ガスさえなければと思うが、雨風よりよほどいいと思う。雨が降り出すとカメラのレンズが曇り撮影すらできなくなる。
 あまり体を冷やさないうちに、そこそこに花見を切り上げ、稜線への最後の登りにはいる。わずか標高差が100mだが、これがきつい。


小太郎山に続く稜線

稜線 稜線に登りつくと、稜線の東側半分はガスがなく、展望が開けていた。前回はガスで何も見えなかったので、これは幸運だった。東側の斜面はハクサンイチゲ、キバナシャクナゲで満開だった。北岳は相変わずガスの中だが、東側の展望が開けたことで、一気に高山の雰囲気になってきた。緩やかな稜線を花見をしながらゆっくりと歩き、何度も立ち止まりザックを下ろして撮影をする。この時点でまだ、宿泊地を決めかねていた。


肩の小屋へと続く稜線の東斜面

肩の小屋 肩の小屋には13時35分に到着した。前回は林道歩きを余儀なくされ、6時間45分を要したが今回は、5時間30分で登ることができた。石に腰を下ろしてあんパンをかじりながら山を見上げる。さてこれからの予定をどうするか。ここから北岳山頂を乗り越して北岳山荘まで行くには2時間かかり、キタダケソウを見に行くには1時間かかる。合計3時間必要だ。14時に行動を開始しても時間的にはゆとりがあるわけだが、キタダケソウの咲く西斜面はこの時点ではガスの中だ。ここで行動を中止し小屋周辺でのんびりとするのもいだろうが、ここにとどまると明日の間ノ岳はあきらめざるを得ない。少し休んだら体力も回復してきたし、おぼろげながら北岳の山体の輪郭も見えだしてきた。「Go!」のサインがでた。


肩の小屋

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