■北岳、間ノ岳(南アルプス)2009年7月4日5日 No.498 隊長 北岳山頂 肩の小屋から山頂までは、標高差200mで50分の距離。このルートを登った登山者のほとんどは、肩の小屋か野営場泊のようだった。天候を見てのピークハントの登山者は何人かみかけたが、重い荷物を担いで山頂を越えていくのは少数派だ。さすがに3000mを越えると息苦しくなってくる。10mほど進んで呼吸を整える。これの繰り返しだ。スタミナと体力はあるが、酸素不足ではどうにもならない。足を止めて酸素を血液中のヘモグロビンにくっつける。この作業を繰り返しているうちに山頂に到着した。 途中で両俣への分岐を確認し、このルートの選択しに一つにとしていたが、どうも水量が多いときは徒渉に苦労するらしいとのこと。 第二の高峰 山頂はガスに包まれていた。若干の期待感を持って登ってきたが、前回と同じく、北岳の山頂へは来ただけとなってしまった。大樺沢の雪渓を俯瞰してみたかったが、これはまた次回の楽しみに残しておくことにし、早々に山頂を後にした。ところで北岳であるが、国土地理院の三角点名は「白根岳」となっている。最初に設置されたのは1904年7月のこと。点の記で一躍脚光を浴びた剱岳の測量は1907年のことだった。たけくらべをすれば、3192mの北岳のほうが200mも高いが、一般の人から見ると知名度はひくい。日本で一番高い山が富士山であることは誰でも知っているが、第二の高峰はと訊くと、答えられない人の方が多いだろう。深田久弥は「日本百名山」の中で、「この山が謙虚だからである」といっている。「抜きん出て人の目を惹こうとするところがない。奇矯な形態で、その存在を誇ろうとするところもない。それでいて高い気品をそなえている。いつも前山のうしろに、つつましく、しかし凛として気概をもって立っている。奥ゆかしい山である」なるほど、その通りだ。前回の山行ではその山容を見ることができなかったが、今回は山の南側から見ることができた。「高い気品をそなえている」に納得した。
キタダケソウ さて、私がこの山に来た目的の一つは、キタダケソウを見ることにある。前回もこの花の咲く時期に来ているが、生憎のガス模様で、群落の様子などがつかめなかった。ガスにつつかれていた山頂から南へ降り、吊り尾根分岐まで来ると、幸運にもガスが徐々に消え始め、自生地であるトラバース道の全容が見え始めた。これはしめたぞ。ザックを吊尾根分岐にデポし、急いで降ることにした。遠くから見るとハクサンイチゲの群落と区別がつかない。前回見たのと同じ場所まで行くと、咲いていました。花にも葉にも特徴があるので直ぐに区別ができる。じっくりと観察や撮影をしたいが、100mの登り返しに15分、分岐から野営場までが1時間かかる。1時間15分を差し引くと残った時間はまりない。時折薄日が射してくるので、そのチャンスをねらって撮影できたのは幸運だった。
ハクサンイチゲ 吊尾根分岐まで登り返し、本日の最終目的地である北岳山荘へ向け、稜線を南下する。振り返ると荒々しい岩場に見えるが、見た目よりも歩きやすいコースだ。荒々しい岩峰もさることながら、キバナシャクナゲやハクサンイチゲの群落が点在し見事に花を咲かせていたのが印象的だった。北アルプス白馬岳に比べると種類こそ多くないが、どこも見事な群落であった。少し季節をずらせ、また来てみたいと思った。 稜線を少し降り北岳の方を振り向くと、ガスがとれて青空が見え始めていた。ある程度の天候の回復は見込んでいたが、最も大切なところで晴れてくれたのは、幸運としか言いようがなかった。これだけで今日の目的が達成されたので、気分良く山荘のある野営場目指して降っていた。 富士山 時間は17時を過ぎていたが、到着客の受付で係のお兄さんが忙しそうにしていた。稜線から俯瞰したところでは、野営場にはふた張りのテントしか確認できなかったので、急いで場所選びをすることもない。場所代の600円と缶ビールを1本(500円)、水1リットル(100円)を買ってテント場に降りた。景色が良くて、風が当たらなくて、地面が水平で、水はけがよくて、静かなところを探すのが面倒になってきたので、適当なところに設営しまずは、缶ビールで一日の労をねぎらう。一日の行動時間が長かったのと、高所であるために頭痛がとれず、食欲もあまり湧いてこない。しかし明日は、ロングコースが待っているので、食べておかないと駄目だ。食材もいろいろと準備したが結局、ハム、チーズ、レトルトカレー、パン、ウインナーとキャベツのコンソメスープという手抜きメニューとなった。食事を済ませテントから外を覗くと、日本一の高峰である富士山がくっきりと、雲海に浮かんできた。また第二の高峰である北岳がコントラストを増して、絵ハガキにも出て来そうな山容で見る人を惹きつけていた。 風と雨 撮影を終えテントに入るなり、どっと疲れが出てきた。時間はまだ18時30分を過ぎたところだが、寝袋に入り横になることにした。無理もないだろう、火曜が熊野、水曜が鈴鹿、木曜が浜松、金曜が駒ヶ岳SAで車泊、そして土曜が北岳のテントの中だ。毎晩寝る場所が違っているので、その順応性が問われるが、シュラフに入るなり眠ってしまったようだ。フライシートの風によるばたつきと、テントを打つ雨の音で目が覚めた。時計を見ると9時で、まだ山荘の明かりも点いていた。少し眠れたので疲れも薄らいできた。暖かいコーヒーで暖まりながら、明日のコースをトレースしてみることにした。時間にゆとりを持たせたいので、予定通り間ノ岳を通過するなら少なくとも4時には出発したいところだ。となると3時頃から準備を始めなければならない。外は強風と雨だ。この状態では間ノ岳を断念するしかなさそうだが、とにかく朝にならないと判断はできない。
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2009年7月4,5日 Copyright (C) 2009 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |