■北岳、間ノ岳(南アルプス)2009年7月4日5日 No.498 隊長 風雨 今度は0時に目が覚めた。フライシートのばたつきが激しくなってきた。どうやら北側のペグが外れたか、本体の綱が外れたかだろうが、雨が降っているので外へは出たくはない。それよりも3時間後の天候が知りたい。前線の通過なら数時間で収まるはずだ。まだこの時点では決められない。同じく仙流荘から出発した三河の山人も今頃は、肩の小屋の野営場のテントの中で眠れない夜を過ごしているのだろうか。いつのことだったから、白馬の野営場で、ポールが折れるのではないかと思うくらいの強風にテントが絶えられることも経験しているので、それに比べるとまだまだ序の口だ。それでも入り口を開けたままにするとつぶれてしまいそうだ。風船のように中に空気が入っているからきっと、つぶれないのだろう。明日の事やら風雨のことやら、気にしていても始まらないので再びシュラフに込んだ。 間ノ岳へ 時計のタイマーで目が覚めた、予定通り3時になっていた。どうやら雨は降っていないようだが、相変わらず風は収まっていない。今日一日の行程をどうするか、迷いながら食事の準備をした。今回、朝用に持参したのはコンソメのリゾット。何度か山行のお供をし、数々の山を経験しているフリーズド食品だが、この北岳で食されることになった。お役に立ててさぞかし喜ばしいことだろう、とたわいもないことを考えながら食事の準備をする。その間にも風が収まるのを待ったが、駄目なようだった。暖かい物を食べてくつろいでいるうちに容赦なく時間が流れていく。野呂川出合12時35分のバスに乗るには少しでも早く出発した方がいい。もし間に合わなくても最終便の14時45分のバスがある。昨日のうちに半分の目的が達成されているので、思い切って間ノ岳に向かうことにした。 中白根山 いざ心が決まれば、片付けるのも早くなる。パッキングを終えて野営場を出発したのは4時50分だった。12時35分のバスにぎりぎり間に合う時間だった。野営場から間の岳までは約1時間40分の行程だ。ガスのために視界はほとんどない。強風で体感温度は平地の冬の気温になっている。低山冬用の手袋をつけるが、指先がかじかんでしびれている状態だ。強風によろめく度に姿勢を低くして立て直す。ハクサンイチゲやキバナシャクナゲの群落が稜線には沢山あるが見ているゆとりがない。強風に耐えながら予定通り40分で中白根山に到着した。当然のことだが誰もいない。休まずにそのまま進む。視界が全くないので、距離感覚は時間の経過でつかむしかない。中白根山より30分ほど歩いたところで、4人パーティーと行き交った。ガスの中から急に表れたのでびっくりした。おそらく早朝に農鳥小屋を出発したグループだろう。 三峰岳 予定通りの時間で間ノ岳の山頂に到着した。誰もいない。少し風が弱まってきたようだし、視界も幾分良くなってきた。とはいっても展望などは望めない。山頂の西側は残雪がまだかなりある。10分ほど休憩し、三峰岳に向かって降っていく。降るといっても2999mの山だ。北アルプスでは高い方の山だ。険しいガレ場がしばらく続きハイマツ帯で落ち着く。少し降っていくとガスが消えだし、これから向かう三峰岳や農鳥岳が見えだし、高山の醍醐味が感じられるようになってきた。30分で三峰岳まで降り、誰もいない山頂で展望を楽しむ。しかしあまりのんきに構えている時間はない。ここから野呂川越までが2時間、小屋に降るのに40分、林道歩きが2時間10分で、合計は4時間40分だ。ガイドマップの所要時間が正確なら、全くゆとりがないことになる。しかし少し早歩きをすれば少しぐらい時間は稼げるだろうと鷹をくくっていたのだが。 仙塩尾根 三峰岳から仙塩尾根の鞍部にある野呂川越までは都合700mの下りだ。標高的にはそれほどたいしたことないが、距離はかなりある。高度を下げるにつれて徐々に、ハイマツ帯からシラビソ帯に入っていく植生の変化が面白い。シラビソの樹林を吹き抜ける風が実にさわやかに感じた。コースはしっかりとしているが、踏み後はそれほど濃くはない。この分だと誰にも会わないなと思っていたら、男性の単独者一人と出会うことができた。この表現で利用度が分かるだろう。 野呂川越 ピークを越えるごとに残り時間が気になり、その都度GPSで現在位置を確認しながら進む。気持ちはぐんぐん先に行くが、重い荷を担いだ体は言うことを効かない。仙塩尾根鞍部の野呂川越には、三峰岳を出発してちょうど2時間5分で到着した。その間、軽い休憩を2本入れているが、ガイドマップの歩行時間にはほとんど遊びがないことが判明した。ますます時間が窮屈になってきた。この分岐から両俣小屋までの降下が40分となっているが、少しでも時間を稼ぎたいところだ。 両俣小屋 がんばって10分短縮して両俣小屋に到着できた。釣り人一人と、男性二人グループが談笑していた。バスの時間まで2時間15分だ。ガイドマップのバス停までの歩行時間は2時間10分となっている。給水と小休止に10分使ってしまったので、5分短縮して歩かないと間に合わない。 少し休憩を入れたので、心身ともに多少なりともリフレッシュできた。二人のグループも北岳からだったが、山頂付近の両俣分岐から直接降りてくるルートだったようだ。彼らは広河原に帰るので、私よりも15分ゆとりがある。一緒のペースで歩いていたのでは間に合わないので、ペースを上げて歩き始める。後は時間との競争になった。こんな山行はしたくなかったが、バス停で2時間待つか、歩いて北沢峠までは行きたくはなかった。 最後15分は、1分ごとに時計を見てカウントダウン。がんばった甲斐があって野呂川出合のバス停に12時31分に到着でき、35分のバスに乗ることができた。昨日出発が同じだった三河の山人とご夫婦がバスで出迎えてくれた。やれやれ。北沢峠で13時のバスに乗り継ぎ帰路についた。完
|
2009年7月4,5日 Copyright (C) 2009 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |