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26日の捜索の前に

Nさんの山の履歴から推測すると、経験のあるルートからの下山を目指したものと思われる。コグルミ谷は危険なので除外しただろう。だとすると、来た道を戻るか、実績のある鞍掛峠へ下るかの二者択一になる。バリエーションの経験がないので、どうしても登山道に頼ることになる。もし迷ってバリエーションに入った場合、深入りをしないだろう。しかし、登山道が見つからないという想定外の事態になったとき、テント装備を持っている山経験3年の単独者はどうするか。風雪に耐えられるゴーグルは持っているが、早く安全地帯まで下りたいと思うだろう。しかし登山道がわからない。この葛藤をどう処理したか。遭難してもおかしくない状況に追い込まれていたのかもしれない。

○来た道を戻る可能性
当日の天候がキーポイントになるだろう。2月12日(日)午前中の天候は冬型になり吹雪いていた。どの程度の視界があったかわからないが、遠くまでは見通せなかったと思う。降雪があったので、前日のトレースは消えていたと思われる。視界が悪くなると、コンパスと地形図を見なければ、下る方向が皆目検討がつかないだろう。そのような条件で、丸山を下り、真の谷を渡って、カタクリ峠まで行けたか疑問だ。カタクリ峠まで行くことができれば、後は県境稜線をたどればいい。下山の12日に藤原岳8合目で目撃情報があるが、もしそうなら、8合目以下で遭難するだろうか。それは考えにくい。
仮にもし、カタクリ峠までたどり着けたら、風雪の激しい県境稜線は避けるかもしれない。コグルミ谷を使えば最短距離で国道に降りられる。しかし、カタクリ峠で、下山に使うコグルミ谷のコースがわからなければP801尾根に入り込んだ可能性がある。この尾根は下部で枝分かれし、険悪な犬帰り谷へと続いている。犬帰り谷は前回、本流を捜索したが、枝谷は見ていない。迷い込んだ可能性はある。

○実績のある鞍掛峠経由で下山する。
しかしこの場合の問題は、御池山頂から鈴北岳までのルートだ。夏に一度歩いているようだが、地形はわからないと思う。視界が悪いので、コンパスと地形図は必ず必要だ。方角をコンパスで確認し、地形を読みながら進まないと駄目だ。うまく鈴北岳までたどり着ければ、下山はできると思うが。
途中でタテ谷に入ってしまったことも考えられる。県境稜線からタテ谷に落ちる谷はほとんどが捜索済みだそうだが、手がかりは得られていない。

○テーブルランドへ入り込んだか
この場合、野営地点が問題になる。どこで野営したかだ。朝6時半に携帯で連絡を入れているので、稜線にいたことは確かだ。私も何度か、冬の御池では野営をしているが、風雪が激しいと、風裏に入らないと厳しい。昨年の野営は、丸山にあがれず、県境稜線で野営した。話はそれたが、目撃情報から推測すると、丸山到着は15時だから、テーブルランドまで足をのばしている時間的ゆとりはなかったと思う。なので、朝の出発は丸山周辺にいたと推測できる。そして朝起きたら吹雪だったので、テーブルランドへは行かずそのまま下山したと思われ。朝起きたと書いたが、風が強くなればテントがばたばたとして早くから目が覚めただろう。食事をしてテントを撤収。撤収も吹雪いていると大変な作業になり、当然手はかじかんでくる、地形図を出してコンパスで方向を確認することもできなかったと思う。それ以前に、バリエーションの経験がないので、コンパスと地図で下る方向を割り出すこともできない。登山道に頼るしかないので、登山道を探し歩いたと思われる。

他にも、テーブルランドを北へ向かったとも考えら得るし、推測すればきりがない。とにかく、未捜索の部分で危険なところからつぶしていくしかない。とりあえず明日は、先週に引き続き、犬帰し谷の枝を中心に捜索する予定だ。

タテ谷は、早春の花の時期に、鈴北への登路として使われることはあるが、登山者はそれほど多くはない。ルートはコグルミ谷から尾根を乗り越し、ガレた涸谷であるタテ谷遡行を回避するようになっている。尾根を乗り越しルートがタテ谷に合流するあたりは急な斜面のトラバースがあり、足を滑らせるとタテ谷に吸い込まれる。
丸山から鞍掛峠方面への下山を目指した場合、県境稜線のP1148から北(タテ谷方面)に降りている尾根に迷い込んだ可能性はある。
このP1148から鈴北岳前の稜線からタテ谷に降りる尾根は何本か捜索が行われているが、
P1148からタテ谷とコグルミ谷までの北東斜面は未捜索である。急斜面の中にいくつかの谷がある地形で、気温が上がり雪が溶けてしまうと捜索が困難になる。雪のあるうちに捜索したい部分だ。