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2010年8月28日29日 剱岳(北アルプス)

 

剱岳(北アルプス)2010年8月28,29日 No.558 隊長、うさぎ
〜早月尾根から剱岳ピストン〜
【8月27日】
馬場島登山口(5:50)〜展望台「松尾平」1000m地点(6:40)〜標高2000m地点(10:30)〜早月小屋(11:10)
【8月28日】早月小屋野営場(4:05)〜2600m地点(5:00)〜2800m地点(5:48)〜(6:30)剱岳山頂2999m(7:05)〜(9:20)早月小屋野営場(10:08)〜1600m地点(11:40)〜馬場島登山口(13:30)
懸案だった早月尾根だが、今回やっと、日程や天候などの条件が揃い、登ることができた。各種ガイドブックを見ると、カニのハサミのところが難所であると書かれているが、実際歩いてみると難しさはなかった。このルート中の核心部分に当たるので、目立つことになっているようだ。ただ、転倒は滑落になるので許されない。別山ルートと比べると地味な感じを受けるが、標高差2200mの登高の試練に耐え山頂を踏む喜びはひとしおである。

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プロローグ 剱岳には三等三角点が設置されている。設置年月日を見てみると平成16年8月24日となっている。我々が前回登頂したのは同じ年の平成16年8月22日で、評点埋設の二日までだった。そのとき評点は厳重梱包され山頂に置かれていた。新田次郎の小説「剱岳 点の記」が映画化されたのは昨年のことだった。

明治39年、軍の命を受け(現在の国土地理院当時、軍の陸地測量部だった)剱岳の登頂と三等三角点設置が、測量士柴崎芳太郎(しばざきよしたろう)に課せられた。そして、翌年の明治40年7月に現地案内人、宇治長次郎(うじちょうじろう)の助けを借りて登頂に成功するが、60キロの標柱の設置は無理で四等三角点になっていた。平成16年に標柱が設置されたことにより三等三角点になった。剱岳の三等三角点の記を閲覧してみると「選点:明治40年7月13日 選点者:柴崎芳太朗」となっている。
少し前置きが長くなったが、今回の登山の目的は、早月尾根を登り剱の山頂に立ちたかったからだ。早月尾根は北アルプス3大急登の1つに数えられ、登山口となる馬場島(標高760m)から剱岳山頂(2999m)までの標高差は2200mある。但し距離はそれほど長くなく8.3kmだ。なので日帰りで挑戦する登山者が多く、この日も軽装で出発する人が何人かいた。自身もアルプス日帰り山行は、昨年度から挑戦していて、笠ヶ岳:累積標高差+-2100m、22km11時間30分、 双六岳:累積標高差+-2000m28km12時間10分であった。とにかく早月尾根は登り甲斐のあるルートだ。

アプローチ 今回も時間がもったいないので前夜車泊だ。前日の夕方に鈴鹿を出発し23日過ぎに登山口となる馬場島に到着した。休憩を入れて6時間の行程だった。よく整備された野営場があり、炊事場、トイレ、駐車場が完備されている。また馬場島荘があり宿泊出来るようだ。高速の特別割引を適用するためには、0時過ぎにICを出なければならないが、時間がうまく調整できず、PAでの車泊も考えたが気温が高く無理と判断し、深夜割引で立山ICを出た。馬場島の駐車場は半分くらいの入りだった。

【第一日目】 

出発 馬場島の標高は760m程度なのでそれほど気温が下がらなかったが、山間部にあるために比較的涼しかったので5時までぐっすりと休むことができた。初日は早月小屋まで上がるだけの行程なので時間にゆとりがあり、ゆっくりと食事し、出発したのは6時前だった。登山口には「試練と憧れ」と書かれた鎮魂碑や、案内板が設置され、名峰「剱」への登山口にふさわしい風格が感じられた。もちろん、別山ルートの登山口となる室堂の賑わいはなく、静寂な雰囲気の中に重みが感じられた。

 

 

登山道はいきなり急登で始まった。尾根末端が急になるのはどこも同じようだ。早朝の山間部といえども標高が760mしかないので気温が高く、最初の松尾平までの急登で汗が噴き出してきた。これから先が思いやられる。体温調節のためにザックをおろし薄着にする。このコースは標高が200m上がるごとに標識が設置されているので、登る目安になる。

立山杉 尾根通しの樹林帯の登山道なので日差しは避けられるが、あまり風通しが良くないらしく、とにかく蒸し暑い。林床にはオオカニコオモリが白い花を咲かせていた。このコースを特徴づけているのはなんといっても、立山杉の巨木が多いことだろう。樹齢はよく分からないが、幹回り数メートルの巨木が多い。この巨木に力をもらいながら、蒸し暑さに耐えながら地道に高度を上げていくしかない。登山口の石に刻まれた「試練と憧れ」の文字が頭に浮かんでは消えていった。


立山杉の巨木

標高差200mごとにある標識を見ながら、1200m、1400m、1600mと徐々に高度を上げていく。それぞれ標識のあるところは小広場になっていて休憩適地だ。今日は先を急ぐ登りではないので、各駅停車で休憩を入れる。1400mから1600mの間隔が少し短いようだった。休憩地も兼ねているので多少の誤差はあるのだと思う。1921mの三角点を過ぎると細長い池塘が現れた。小さなオタマジャクシが無数に泳ぎ、ギンヤンマがしきりと卵を産み付けていた。ダケカンバ帯に入ると徐々に高山の雰囲気が感じられるようになってくる。草地にはカライトソウ、カシモツケソウ、ミヤマオトギリ、ツルリンドウなどの秋の花が目を楽しませてくれた。


ゴゼンタチバナ

 
ミヤマオトギリ           カライトソウ

 
ツルリンドウ         シモツケソウ


2000m地点


池塘

早月小屋 池塘付近で一旦、登りが緩むが、再び急登に転じる。崩壊地を乗り越えロープで岩場を這い上がるとやがて早月小屋が見えてくる。野営場はそれほど広くなく、20張り程度の広さだ。展望は良さそうだがガスで何も見えない。出発が早かったので場所は自由に選べた。テントだが、前回の南アルプス山行で、強風下での作業があったのでポールが曲がっていたが、設営に問題はなかった。5年以上使い込んでいるのでいて、シーズンに1度はポールが折れそうな状況下で使用している。そろそろリニューアルの時期か。午後になると続々とテントが立ち始めスペースがほとんどなくなってしまった。ひとまずはテントを設営し落ち着く。午後からはフリーなのでゆっくりとした時間を過ごす。さて「早月小屋」にはもう一つ「伝蔵小屋」という名前が付いている。伝蔵とは創業者の名前をとっていたそうで、経営者が変わり「早月小屋」と改称。今は、伝蔵さんの息子さんが小屋の主となっている。

設営料は500円。水はペットボトルで購入することになり、2リットルが800円と割高だ。ヘリで荷揚げしているからだと思うが、この日は明日の分も含めて4リットルを購入した。できれば少しでも多く馬場島から荷揚げしたいところだ。ペットボトルのお茶やジュースは一律500円。ラーメンとおでんはそれぞれ500円でお値打ち。なので、昼食はラーメンとおでんにした。おいしかった。元富山県警山岳警備隊員であったご主人の佐伯さんは厳つい風体をしているが、優しくてこころ暖かそうだ。午後はガスが晴れれば少し上まで登りたかったが、ガスが晴れなかったので、昼寝をしたり、付近を散策したりして過ごした。16時頃から夕食の準備を始める。メニューは野菜サラダ、味噌汁、ポテトサラダ、カレーライス、α米だ。今回カレーライスは、天野フーズのフリーズドを使ってみた。値段が高いが食料軽量化に役立つ。味、コク、香りともに良でした。


早月小屋野営場はこじんまりとしている

 
エゾシオガマ         カラマツソウ

 
オオカサモチ

 
ヤマハハコ          ナナカマド


小屋には2つの名前が


早月小屋


小窓尾根

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