■穂高連峰(北アルプス) 2009年9月20-22日 No.507 じんじんさん、隊長 プロローグ 懸案だった山行計画がやっと実施できる運びとなった。1泊2日なら休暇と天候の折り合いがつきやすいが、2泊3日となると季節、天候、休暇の条件を整えるのがかなり難しくなってくる。この9月の連休の機会を逃すと来年に先送りのつもりだったが、心配していた台風がうまくそれてくれたおかげで、かなりいい条件での山行が実現できた。当初はキレット越えをメインに据え、ゆとりの時間は涸沢か天狗原あたりの散策を考えていたが、じんじんさんから本谷遡行のプランが入り、二本立ての山行となった。 アプローチ 例によって山行前が日程的に窮屈だ。夜行バスで東京から熊野まで帰り、所用を済ませた後鈴鹿に戻ったら14時を過ぎていた。少し休んでからパッキングを済ませ、夕食をとるとすでに時間は18時を過ぎていた。自宅を18時30分に出発し、渋滞もなく予定通り22時過ぎに平湯の森の駐車場に到着。後部貨物室に布団を敷いて横になった。前日はバス泊で今日は車泊と連日の不規則パターンだが、シュラフをかぶるとすぐに目が閉じてしまったようだ。翌日、じんじんさんの車の窓をトントンとたたく音で目が覚めた。どうやら腕時計のアラームには反応しなかったようだ。始発は6時半だと思っていたがどうやら、5時過ぎからバスが動き始めているようだった。アカンダナ駐車場に車を移動すると、第1駐車場はほぼ満車状態。準備をして6時のバスに乗り、上高地バスターミナルに6時30分に到着した。 出発 上高地はすでに出発する登山者で賑わっていた。川縁は朝霧がかかり、その向こうに西穂高岳あたりの山並みが浮かび上がっていた。実にすがすがしい朝だ。上高地から横尾までは通称「横尾街道」と呼ばれる平坦な遊歩道が10キロ以上も続く。途中には約4キロごとに明神と徳沢があり、宿場町のような休憩ポイントになっている。年に一度や二度は通る「通い慣れた道」で、真新しさはないが、山への思いが膨らみ知らず知らずのうちに早足になってしまう。まず目に飛び込んでくるのは明神岳だ。そびえ立つ岩峰を見上げると投降意欲が掻き立てられる。明神を過ぎ徳沢に到着。野営場はテントの花盛りだった。 本谷橋 上高地を出発して約2時間半で横尾に到着した。ここも登山者で溢れている、いったいどれだけの登山者が入山するのだろうか。ザックを下ろし小休止を入れる。ここからは屏風の頭と前穂高岳がよく見える絶好の休憩ポイントだ。遊歩道はここまでで、これから先は3本の登山道に分かれる。右は蝶ケ岳、直進が槍ヶ岳、左へ進むと涸沢だ。横尾大橋を渡りコースタイム通り約1時間で本谷橋に到着した。途中、南岳を見上げるポイントがあり、樹間から平べったい山頂を持つ南が覗けた。今日はあそこまで登らなくてはならない。 さて一般登山道はここまでだ。情報によると左岸から入るとなっているので、橋を渡らずにそのまま進めばいい。先ずはここで一本、休憩を入れることにした。対岸では多くの登山者が休憩をしていた。その登山者を尻目に遡行を開始する。ここからは登山道を外れていくので、登山者から忠告の声などがかからないかと心配したが、岩を2,3つ越えると本谷橋はすぐに見えなくなった。 横尾本谷 横尾本谷は大小の岩が堆積する荒々しい谷だ。遡行の記録は検索サイトで調べると容易に見ることができるが、一般登山道ではないので当然、目印や案内などは全くない。ルートを見極め岩を拾いながら登っていく。乾いた岩はグリップがあるが、降雨後や増水時は岩がかなりすべるので注意が必要だ。もし事故が起こって自己責任だ。この日の入渓者は前後を見る限りでは、我々を含めて5名だった。 おおよその地形図は頭に入っているが、スケール感は実際に見て判断することになる。まずは涸沢谷分岐があるはず。 涸沢谷分岐 本谷橋から30分ほどで涸沢谷に到着した。我々はほとんど左岸よりのコースをたどってきた。さほど水量がないときは、自分なりに歩きやすいルートをたどればいいだろう。涸沢谷は大きな谷かと思ったが、それほどでもなくやはり、横尾本谷の支流だ。以前はここを詰めていくコースもあったそうだが今はその面影はない。徐々に谷が深くなってくると、岸を巻く箇所がいくつかある。そういったところは両岸がガレていて、上部からの落石に注意を払いながら慎重に通過した。ほとんどが浮石なので容易に石を踏むことはできない。 キレット分岐 登るにつれて徐々に谷が狭くなっていった。振り返ると屏風の頭がそびえ立って見えてくる。上部にパノラマコースが、山裾に涸沢へのコースが見えていた。何度か巻いた後に二股に到着した。左が横尾本谷でキレットまで突き上げている。右が本日向かうコースで右股だ。ここまできて初めて先行者が2名いることが確認できた。ここで小休止を入れる。水は豊富にある。枝沢からのおいしい水がいつでも飲めるのでありがたい。さてここからは谷がさらに狭まり傾斜が増してくる。 小滝の通過 20分ほど進むと最初の難所の小滝にあたる。流れを遡ることもできそうだが、岩がツルツルなので危険だ。情報通り左岸の大岩からザイル垂れ下がっていた。ここから登れということだろう。決して難しくはないが、ザイルや木の枝に捕まって登ると構造的に、どうしてもザックが引っかかってしまう。スリンクを準備していたが、無理矢理突破した。先ずはザックを岩の上に上げておけば、難なく通過できるだろう。先に登り、岩の上からじんじんさんのザックを引き上げた。 小滝の上に立ち谷をのぞき込む。どうやら後続の単独者がいるようだ。我々と一定の間隔を開けて登ってきているようだ。結局最後まで追いつかれることはなく、この単独者は上部の雪渓でビバークしたようだった。 カール末端 これを通過すると谷はさらに狭く険悪になってくるが、遡行の難しさはない。浮石とスリップには注意が必要だが。1時間ほど進むとカールの末端が見えてきた。V字型の谷がそこで切れているので、遠くからでもよくわかった。荒々しい岩を伝って最後の急登をしのぐと、カールが一面に広がった。ここは「黄金平」の通称があるようだ。 ナナカマドが色づき始め、来週あたりには見頃となるだろう。涸沢の紅葉は何度も見てきたが、初めて見る絶景にしばし立ち止まる。渓流、ハイマツの緑、紅葉、岩峰、青空の織りなす自然の芸術は実にすばらしい。 |
2009年9月20-22日 Copyright (C) 2009 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |