■双六岳(北アルプス)2009年8月30日 No.504 隊長 プロローグ 天候が芳しくなかったので、剱山行が取り止めとなった。前後に夏期休暇を取り、準備はしていたが、天候だけは思うようにならない。前回の笠ヶ岳日帰り山行で、登山のスタイルの可能性が広がり、今回の双六日帰り山行につながった。日帰り山行は、標高さや歩行距離だけではな、アプローチが非常に大きな要素を占めている。上高地など、シャトルバスを利用しなければならない山域は、自ずと時間に制約を受け、計画が立てにくい。その点、登山口とて新穂高温泉を利用するとは、アプローチの制約がなく、朝の出発を早めたり、下山に想定外の時間を費やしても対応できる。ただし山域は限られ、シーズンには無料駐車場が満車になることが多いのが課題だろう。 アプローチ さて今回のアプローチだが、前日が休みだったので、夕方にゆとりを持って出発し、ゆっくりと車泊をする心づもりだったが、なかなか思うように事は運んでくれない。事情により夕方には、熊野まで戻らなくてはならなくなった。鈴鹿の自宅から新穂高温泉までが240kmで、熊野往復が340kmだから、加算すると580kmとなる。熊野を何時に出られるかがカギだが、熊野から新穂高温泉まで400kmあり、少なくとも6時間は必要だ。仮に20時に出たとして、新穂高温泉着は2時だ。これでは睡眠時間が足りなくなる。さてどうするか、普通なら計画を中止した方が賢明だが、すでに山行モードにスイッチが入り、おいそれとは諦めきれない。困難な条件になるほど向かっていきたくなるのは、冒険心がくすぐられるからだろうか。 出発 慌てて起き上がり、夜食のサンドイッチの残り半分をパクつきながら準備をした。天気もぱっとせず、夏山シーズンも終盤なので登山客は少ないようだ。また日曜日の出発ということもあり、駐車場も2,3人の登山者が出発の準備をしているだけで閑散としていた。体はまだ半分眠っているので、ただ義務で歩いているようで、意欲が湧き上がってこない。穴毛谷が見えるあたりまでくると、体が温まると同時にテンションも上がってきた。 林道も前後には誰も歩いておらず、ひと組のご夫婦を追い越しただけだった。退屈な林道歩きだが、黄色い花を大きく開いたマツヨイグサがたくさん咲いていた。マツヨイグサモ何種類かあるが、たぶんこれは帰化した種だろう。人が少ないときはクマの出没が心配なので、クマ鈴を大きく鳴らしながら歩いた。 予定通り笠新道の水場に到着し給水した。先週はからっとした空気に包まれていたが今日は、前線に向かって南の湿った空気が入っているようで、気温が低いがべとべとした感じだ。一汗流しても調子が上がらないのは、気候のせいだろう。わさび平小屋を通過し、小池新道の登山口に6時35分に到着した。もう少し時間を稼げると思ったが、なかなかペースが上がらず、1時間20分を要してしまった。とにかく今日は長丁場なので、最初からとばすとスタミナが心配になるので、これくらいがいいのかもしれない。 小池新道の登山口となる左俣谷の河原に降りると気持ちが引き締まる。案内に鏡平小屋まで3時間30分と書かれている。テント泊装備で3時間くらいなので、できれば、2時間半くらいで登りたいがどうだろうか。この小池新道も過去に何度か歩いているので、だいたいの様子は把握できている。日差しが強いとつらい区間になるが、幸いにも今日は曇り空だ。無理をせず八分くらいの力で歩き出した。30分ほどで秩父沢出合を通過する。予定通りだ。この小池新道だが、弓折岳から抜戸岳にかけての稜線は急峻な斜面になっていて、崩壊した土石が堆積した扇状地のような地形につけられているので、石や岩を踏んで歩くことが多い。秩父沢を過ぎ、少し登ると秩父小沢出合だ。ここで小休止を入れほてってきた体を冷した。 その後、チボ岩、イタドリ原、シシウドが原、熊の踊り場と、目印となる箇所を通過し、9時前に鏡平に到着した。予定通り2時間20分のコースタイムとなった。この周辺は普段、登山者が集い賑わうところだが、夏と秋の狭間の季節でもあるので閑散としていた。この間、何人かの登山者を追い抜いてきたが、下山者はほとんど出会わなかった。鏡平の池は、槍ケ岳が写り込むことで名所になっているが、残念ながらこの日は、逆さの槍は見ることができなかった。鏡平の標高が2280mで、新穂高温泉が1040mなので、ここまでで1240mの標高を稼いだことになる。双六岳の標高が2860mなので、アップダウンも含めるとあと、700mほどの登りが残っているので、まだまだ気を緩めることはできない。 鏡平を通り越すと弓折岳の東斜面のトラバース道となる。中段までは灌木帯を進むが、やがて森林限界を越え、草付の斜面となる。中段からは花も多く展望が開けるが、残念ながら今日はガスで何も見えない。花はミヤマトリカブト、アキノキリンソウ、オオシシウドなどすでに秋の花に衣替えをしていた。鏡平から稜線の弓折岳分岐までは標高差が300mなので、ひと登りといったところだろう。累積標高が1500mを越えるので、足腰に疲労がたまり始める区間でもある。 弓折岳分岐まであがると、双六までの2.5キロは稜線歩きになり、気分的にも楽になる。ガスさえ晴れてくれれば、眺望を楽しみながらの稜線歩きになるが、残念ながら展望は得られなかった。しかし遅くまで残っていた雪渓の縁には、夏の花がまだまだ咲き残っていた。稜線は多少のアップダウンがあるものの、総じて歩きやすく、花見平や池などの見所もあり退屈しないだろう。コースは2622のピークを過ぎると双六谷源頭のトラバース道になり、双六岳が身近に迫り、乗越には双六小屋の施設や色とりどりのテントが見えてくる。 |
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