■釈迦ヶ岳(大峰)2009年6月7日 No.495 隊長 | ページ1 | ページ2 | プロローグ 大峰山は、修験道の根本道場として全国に広く知られている。新田次郎の小説「点の記」の舞台となる剱岳や「槍ヶ岳開山」の槍ヶ岳も、宗教色の濃い山の印象を受けるが、それ以上に岩峰の魅力の方が勝っているように思う。しかし大峰の山々は木曽の御嶽山と同じように、修験の山としての印象が強く、山岳の魅力以上に宗教的な色合いが勝っている。今回も前鬼からのアプローチであったが、営業宿坊の小仲坊や深仙の宿といい、山頂の釈迦如来といい、登山者へ与える印象は強烈だ。これから先、人生が大きな壁にぶつかれば、修験の世界に入り込むこともあり得るが、今回は花見山行が目的だ。 アプローチ 熊野を6時に出て、登山口の前鬼林道ゲートに7時に到着した。前鬼口からのびる前鬼林道は、比較的整備された舗装された林道だが、時折落石が道に転がっているので注意が必要だ。距離は8キロで標高差が300mあるので、徒歩なら3時間は必要だろう。終点のゲートまでには、景勝の「不動七重の滝」があり、林道から全景を見ることができる。落差が100mの段瀑で、一番大きく見えるのが2段目だそうだ。滝に関する知識はほとんど無いが、日本百名瀑に数えられているようだ。林道からは散策路があるようなので、機会があれば一度、散策したいと思っている。林道はこの滝の当たりが険しく、隧道が4つほど設けられている。これを過ぎると終点ゲートは近い。 サルナシ ゲート前の駐車地には車が数台駐められていた。天気も上々で季節的にもいい時期なのだが、思ったほ前鬼からの入山者は多くないようだ。GPSのスイッチをオンにして歩き出すと、橋のたもとでサルナシの花が出迎えてくれた。サルナシはマタタビ科マタタビ属のツル性落葉樹で山地に自生し、この時期に花が開く。実は近縁にあたるキウイフルーツにそっくり。熟した実を食してみたいといつも思うが、その頃になるとほとんどがサルなどに採られてしまっている。 前鬼 ゲートから小仲坊まではそのまま林道を歩いても良いが、前鬼川黒谷左岸の登山道を歩くこともできる。今回はこの登山道を歩くことにした。登山ボックス脇を通り谷に降りて吊り橋を渡る。渓流の音を聞きながら植林帯を歩いていく。登山道は石畳などでよく整備されているが、雨が多い地方と言うこともありあた、あまり歩かれていないのか、滑りやすいので歩きにくかった。ゲート付近の標高が600m、前鬼が800mだから、都合200mの標高差があり、この行程を約30分で歩くことになる。この季節、気温は高くはないが湿度あるので、宿坊までにひと汗流した。 小仲坊 小仲坊に入ると飼い犬が「ワンワン」と出迎えてくれた。宿坊を抜けて山道に入り、日陰で体温調節を兼ねて一息入れた。さてここから「太古の辻」までは標高差650mの登りとなる。谷筋のコースで、常緑樹に混じって所々でトチの巨木が見られる。木々が葉を広げるこの季節は、陽射しが遮られ薄暗くなっている。気温が高くなるとヤマヒルの動きが活発になるようだ。足下には気をつけていたが、ふと足元を見ると1ヒル献血となった。指で払い落とすと血がにじんできた。実害は少ないが、常に足下を気にしなければならず、落ち着いて歩けない。谷を詰めていくと木製の階段の設置箇所が多くなり、傾斜も急になってくる。この辺りが踏ん張りどころだ。階段でグイグイと高度を上げていき、少し傾斜が緩んだところに「二つ岩」がある。奥駆道を歩いてきた外国人がくつろいでいた。 太古の辻 小中坊から休憩を入れずに約1時間半で、一気に「太古の辻」まで登った。背の高いスズタケが見られるようになると樹林が開け明るくなってくる。サラサドウダンが花盛りだった。足下には落花したシロヤシオの花が見られる。太古の辻は新緑が鮮やかな初夏の装いを呈していた。きれいな山の形をした大日岳(1568m)が目に飛び込んできた。木陰に入りひと息入れる。西に石楠花岳というピークがあるようだ。石楠花という名が付くようなので、シャクナゲの花が見られそうだが、たぶん花期が過ぎているようなので足が向かなかった。ここから奥駆道はさらに南に延び、笠捨山、玉置山へと続いている。 深仙の宿 さて、ここから釈迦ヶ岳までは奥駆道を歩くことになる。まず大日岳1599mの山腹を巻、二つほど小ピークを越え鞍部に降りると「深仙の宿(しんせんのしゅく)」がある。途中に「聖天の森」というところがある。平坦地になっていて、灌頂堂(かんちょうどう)と参籠所(さんろうしょ)が建っている。また近くには、「香精水(こうしょうすい)」という水場があり、野営場にも適していようだ。 深仙の宿のある鞍部からは再び登りに転ずる。標高差は約300mで、約1時間の行程だ。落花が目立っていたシロヤシオも、標高が上がるにつれて花の見頃となっていく。鈴鹿のシロヤシオもことしは当たり年で、たわわに花をつけていたが、ここ大峰でも目を見張るほど花付きがよかった。何度も立ち止まり見入ってしまうほどで、急な登りもそれほど苦にならなかった。 シロヤシオ シロヤシオはたまに、ピンクがかった樹がある。近づいて撮影をしていると、後続の単独者と話をする機会ができた。栃木からきたようで、今週で4週間、車泊をしながら山に登っているとのこと。義務や責任、雑多な生活から逃れ4週間も、旅をしながら山に登れるのはうらやましい限りだ。シロヤシオの花の時期に合わせたわけでもなく、たまたま今日が大峰の釈迦になったそうで、肩肘張らない花との出会いが、これまたうらやましい。 釈迦ヶ岳 山頂1799.6mは賑わっていた。前鬼からの登山者はそれほど多くないと思われるが、登りやすい旭からの登山者が多いようだ。一等三角点が設置されるだけあって、山頂からはパノラマ天望が得られる。この日は空気の透明度が高く遠望がきいた。弥山にまとわりつく雲が印象的だった。広くない山頂なので、団体さんが長く留まる所ではさそうだ。傍らの日陰に腰を下ろし、少し早い昼食とした。山頂を通り過ぎる風が実にさわやかだった。 釈迦如来像 山頂にはご存じのように釈迦如来像が設置されている。釈迦の柔和な顔立ちとは対照的に、台座のゾウは怖い顔をしているのが印象的だ。まだまだ時間が早いので、このまま帰るにはもったいないが、青空と満開のシロヤシオで十分満足できたので、ゆっくりと歩いて帰ることにした。トウヒやシラビソに混じってオオイタヤメイゲツの新緑が目を惹いた。 | ページ1 | ページ2 |
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