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2008年3月16日 仙ケ岳、宮指路岳(鈴鹿)

 

仙ケ岳、宮指路岳(鈴鹿)2008年3月16日 No.443 取材 じんじんさん、りんちゃん、隊長
(7:45)小岐須駐車場=大石橋(8:10)−仙ヶ谷取付(8:35)−林道終点(8:40)−仙鶏尾根分岐(8:55)−(9:45)仙鶏乗越(9:50)−?分岐(10:15)−(10:45)仙の石(10:57)−仙ケ岳(11:10)−小峠(11:30)−(12:26)宮指路手前ピーク(12:10)−(13:33)宮指路岳(13:45)−(14:20)東海展望(14:30)−大石橋(15:38) コースタイム記録 りんちゃん
このコースは、鈴鹿南部のいいとこ取りコースだ。ヤマップシリーズで採用したコースだが、記憶が薄れてきているので、登山コースの状況調査を兼ねて取材に出かけた。協力者はじんじんさんと、りんちゃんでしたが、お二人とも花粉症でかえってからが大変だったようです。
さてこのコースだが、南部鈴鹿の主脈上の2峰を1日で楽しめる点が評価できると思う。谷あり尾根蟻岩場ありで、展望もよしだが、仙ケ岳と宮指路間の稜線はアップダウンを繰り返すので、結構体力を使う。しかしその分、一層の充実感の味わえる。さてトップの写真だが、マンサクが花盛りだったので、久しぶりに花の写真にしましょう。

仙ケ岳と宮指路岳は、鈴鹿南部の主脈上に位置する2峰である。それぞれに特色があり、見どころも多く、季節を問わずよく登られている。
宮指路岳の山名は、神にまつわる信仰と深く関わっていそうだが実は、標高946(くしろ)のごろ合わせによるものらしい。一方仙ケ岳は、仙鶏尾根でつながる野登山とともに、宗教的な意味合いの強い山岳で、野登山には野登寺が、また仙ケ岳には修験にまつわる石仏や岩がある。
両山とも標高が900m弱と低いため、比較的短時間で山頂を往復できる。もちろん1日1峰の充実山行もいいが、ここでは主稜線縦走を含めた周回コースを紹介する。

このコースの登路は小岐須渓谷からである。長年の浸食作用により渓谷は深く刻まれ、岸壁に付けられた林道は、大雨などの災害直後は必ずと言っていいほど通行不可となる。通常なら大石橋を過ぎたあたりの駐車地まで車を乗り入れることができるが、小岐須山の家で通行止めのことが多い。この場合は大石橋まで、30分かけて歩くことにある。
小岐須山の家には駐車場やトイレが設置させていて、野登山と入道ケ岳への登山口にもなっている。対岸の斜面は石灰岩の採掘により無惨な山肌をさらしているが、「石大神」と呼ばという石灰岩の岩柱がそびえ立っており、県指定の天然記念物になっている。
大石橋からはしばらく林道を歩き、終点から仙の谷に沿った登山道に入る。仙ケ谷通過ポイント1の標識がある。(鈴鹿市管轄の山には、通過ポイントという標識が、消防署により設置されている。遭難や事故の連絡時に役立つ)コースは谷の右岸を進むが、数百メートル入ったところで左岸に移り、植林帯岸壁の道となる。道幅が狭くなっている所が何カ所かあり、フィックスロープが設置されている。いずれにしろ足下には十分注意を払いたい。少し谷が広くなってくると通報ポイント2の標識があり、ここが仙鶏乗越への分岐点になっている。谷を渡りまずは支尾根に取り付く。ここでグイグイ高度を上げ少し傾斜ゆるむと谷の土崖斜面の登山道になる。このあたりは通過ポイントの標識が不規則に設置されている。源頭部で谷を渡り急斜面を登ったところが仙鶏乗越である。


マンサク

さてここからは仙ケ岳東峰に向けて、痩せ尾根の急登となる。高度を上げるにつれ、徐々に展望が開けてくる。登山ならではの醍醐味だ。傾斜がゆるむとまもなくで東峰にある仙の石に到着する。
仙の石は、仙ケ岳を特徴付ける巨石で、


仙の石

仙の石は、仙ケ岳を特徴付ける巨石で、修験道が盛んなころは行場であったことが伝えられている。展望も良く、仙ケ岳本峰や南尾根を一望できる。本峰へは、白谷の源頭鞍部から登り返す、約15分の行程だ。本峰山頂はそれほど広くはなく、登山者が多いと長居ができない。東方の展望は抜群で、鈴鹿南部の山々が一望できる。特に鎌ケ岳は、遠くから見てもその山容から、日本アルプスの槍ヶ岳のように容易に特定することができる。 さてここからは、鈴鹿山脈の縦走路になり、小峠に向かって高度を下げていく。小峠は仙ケ谷から登り着く峠で、昔は近江と繋ぐ役割をしていたようだが、時とともに廃道化したようだ。


雨乞岳


仙ケ岳より

ここから犬帰りの険までは、やせ尾根で起伏の多いルートとなる。それぞれの小ピークからは、宮指路岳東峰付近の岩場が一望できる。また変化の多い地形は興味深く、上り下りの辛さもそれほど苦にはならない。犬帰りの険手前のピークは、見晴らしの良い岩場になっているので、一息入れるのにはいい場所だ。


どこもマンサクが満開だった


稜線の痩せ尾根

犬帰りの険はアライ谷源頭の鞍部のことで、脆い岩のヤセ尾根で、鈴鹿山脈縦走路中の難所の一つである。慎重に下り急斜面を登り返した所が宮指路岳山頂である。25分ほどの行程だが、印象に残る区間である。 宮指路岳山頂は樹林の中にあるが、すぐ近くの馬乗り岩まで移動すると展望がよくなる。帰路はカワラコバコースとヤケギ谷コースがあるが、ここでは見所の多い、ヤケギ谷コースを紹介する。


東海展望と三体仏岩


犬帰の険

まず本峰を下りヤケギノコルを経て東峰に移る。まず右手に樹林の間から三体仏岩(三体の石仏が並んだような自然石)が見えてくる。稜線から外れ少し下ると三体仏岩に降りることができる。岩の上に乗るのは危険だ。続いて小ピークを乗り越した所に東海展望といわれる岩場がある。こちらの方は名にあるように、岩の上から伊勢平野を一望できる。 東海展望を後にし、雑木林の斜面を東に下っていくと小さな谷に降りる。ここからは何本かの支谷を横切りながら高度を下げていく。地形は複雑だが要所には通報ポイントの標識が設置されており、踏み跡もしっかりとしているので迷うことはないだろう。もう一本南の谷と合わさると植林帯に入り、しばらく進むと通報ポイント2でカワラコバコースと合流する。ここまで来ると出発地点の大石橋はすぐそこだ。


馬乗り岩


三体仏岩から東海展望を見る


東海展望から仙ケ岳を見る


トウゴクサバノオ


ハナネコノメソウ

さてシロバナネコノメソウだが、ハナネコノメソウとの区別が難しい種だ。三重県レッドデータブックを見ると、いずれの種も記載されていないので、絶滅危惧種に上げられていないことがわかる。
 まず植物図鑑の元祖的存在の、「牧野 新日本植物図鑑」(北隆館)で調べてみる。すると、ハナネコノメソウ(chrysosplenum stamineum)は取り上げられているが、シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)は掲載されていない。chrysosplenumは、ネコノメソウ属のこと。同じく北隆館の「原色牧野植物大図鑑」も同じで、シロバナネコノメソウは扱われていない。それでは山渓ハンディー図鑑はというと、ハナネコノメソウやキバナハナネコノメソウの母種がシロバナネコノメソウという扱いになっている。学名を見てみる。
  シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)
  ハナネコノメソウ(chrysosplenum var.stamineum)
  キバナハナネコノメソウ(chrysosplenum var.flavum)
となっている。 var. がつくということは、変種であるということを表しているので、シロバナネコノメソウが母種であることになる。
 まず記述の詳しい、牧野新日本植物図鑑でハナネコノメソウについて調べてみる。

●ハナネコノメソウ ユキノシタ科 ネコノメソウ属
花猫の目草:花の白さが特に著しく感じるのでこの和名がつけられたようだ。
【生育地】
関東および中部の山間の谷川の縁に生える多年草:牧野図鑑
福島県から京都府に分布:ハンディ図鑑
生育地に関しては、地域的なものや、山間の谷川の湿地については一致している。一方シロバナネコノメソウは、分布域が近畿地方、中国地方、四国、九州となっている。ちょうどこの三重県のあたりで分かれていることになる。昔から西と東は、関ヶ原で分かれるようだが、植物に関しても、同じようなことがいえるのかもしれない。
【茎】
花茎は、高さが5センチ内外。直立して頂端部に花序がある。その他の茎は花が終わってから根の近くから出て、四方に伸びる。黒っぽい紫色を帯び 細くて水分を多く含み軟らかく白色のちぢれ毛がある。

鈴鹿南部で撮影2007/3/17

【葉】
小型で葉柄がある。一般に対生であるが、時に互生も混じる。円卵形。鈍鋸歯。黒っぽい緑色。
【花】
花茎の頂端に、2、3個の花がまばらにつく。早春の頃開く。花弁はなく、ガク片が白色で4個。直立し鐘状に開く。ガク片は長蛇円形で先端は鈍形。縦の脈がはっきりと見える。おしべは8個。花糸は細長くガク片より長く直立している。やくは、紫黒色の点状。めしべは1個で、花柱は二つに分かれる。さく果。

シロバナネコノメソウ(母種)ハナネコノメソウ(変種)
分布近畿地方、中国地方、四国、九州福島県から京都府に分布
花期4,5月3,4月

ガク片は斜開し、先がとがる
やくは、暗紅色。

ガク片は、まるみがあり先はとがらない
やくは、暗紅色。牧野では、紫黒色。
茎 走出枝は暗紅色を帯びる
葉扇円形で鈍鋸歯が6〜9個卵円形で、葉の鋸歯は3〜7個
総合的に判断してみると、花がシロバナネコノメソウで、茎と葉は、ハナネコノメソウの特徴を備えているようだ。母種が少しずつ変化していると見ることができる。

 

 

2008年3月16日 Copyright (C) 2008k.kanamaru. All Rights Reserved.  home