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■錫杖岳前衛峰(北ア)
〜注文の多い料理店〜

レポート No.892
日時:2015年6月14
参加者:sskさん、隊長、うさぎ

槍見温泉駐車場(5:15)〜クリア沢(6:30)〜錫杖沢出合(7:10)〜取付(8:10)〜1ピッチ目(8:45)〜2ピッチ目(9:15)〜3ピッチ目(9:55)〜4ピッチ目(10:30)〜5ピッチ目(11:05)〜(12:25)懸垂下降(13:20)〜錫杖沢出合(14:30)〜クリア沢〜駐車場(15:50)〜ひがくの湯(16:00)〜鈴鹿(20:30)


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プロローグ 今年の目標だった2本目が今回の「注文の多い料理店」。先々週の大台ケ原の「サマーコレクション」がマルチピッチフリールートだったが、このルートはどちらかというとアルパインの要素が強いルートだ。各終了点にはハンガーボルトが設置されているが、プロテクションは基本的にはナチュラルで、ある程度のルートファインドも必要になる。グレードこそ5.8〜5.9が中心だが、それ以上のプレッシャーを感じた。梅雨間の好天が味方してくれ、充実したクライミングとなった。

宮沢賢治の「注文の多い料理店」をご存知だと思うが、猟に行った時、たまたま山奥で見つけたレストランに入ったら、色々と注文を出されて、気がついた時には自分たちが食べられるところだった、という話だったと思う。今回、いろいろと注文には答えるつもりだが、食べられないようにしたい。

アプローチ 錫杖沢出合でキャンプはできるが、基本的には日帰りでやれる山域だ。今回も前夜車泊とし、早朝の出発とした。駐車場は無料だがそれほど広くはないので前夜から入りたい。人気が高い山域なので、ルートのキャパ超えが心配だったがこの日は、我々も含めて3パーティーだった。金沢からのパーティに声を掛けると「注文」をやるとのこと。先に出発するようなので、待ち時間を考えると我々は急ぐ必要もなくなった。

    
左:槍見温泉の駐車場を出発5:10 右:橋からは槍ヶ岳が見えている

   
笠ヶ岳登山口               オダマキ

さて登山口から岩壁の取り付きまでが3時間の行程だ。もちろんアプローチは短いに越したことはないが、アルパインクライミングにアプローチはつきもので、剣や穂高に比べると随分楽だ。ホームの御在所でも登山口から岩壁まで1時間半はかかる。朝が早かったし曇り空だたので涼しかったがそれでも、登るにつれ汗が滴ってきた。ミヤマオダマキ、ハクサンチドリ、コケイラン、フタリシズカ、ユキザサ、ミヤマキンバイ、タチカメバソウなど夏の花を見ると心が和み、これから始まる厳しい登攀を忘れてしまう。タチカメバソウだが、花を見てムラサキ科であることはすぐにわかったが、和名が出てこなかった。

        
ハクサンチドリ         フタリシズカ

   
クリヤ谷              ユキザサ

      
コケイラン                  ブナ

予定通り2時間で錫杖沢出合に到着した。沢のほとりで小休止。岩場にミヤマキンバイが鮮やかな黄色い花を開いていた。谷には雪渓が残り、岸壁へのトレース取り付きを塞いでいた。谷から滑る斜面を潅木につかまりながら這い上がり、雪渓を歩いて取り付いた。本日最初の核心がここにあった。

      
前衛峰             ミヤマキンバイ

        
左:錫杖沢出合で一息  右:タチカメバソウ(ムラサキ科キュウリグサ属)

谷から岩壁まではしっかりとしたトレースだ。下部は谷に沿って進むので濡れた岩に注意が必要だ。その後急斜面を登っていくと正面に岩壁が見えてくる突き当たったところが左方カンテの取り付きだ。登山道の途中で男女ペアが追い越して行ったが、どうやら左方カンテをやっているようだ。谷に降り登っていくと雪渓が残っていて岸壁基部にはシュルンドが口を広げていた。どうも具合が悪い。雪渓崩壊の危険がるので下は潜れない。基部に沿って這い上がるしかなさそうだ。岩壁に沿って斜面を這い上がる。今実二度目の核心だ。先行パーティがすでに取り付いているはずだが姿が見えない。他のルートに転身したのかと思っていると谷を上がってきた。どうやら出合いから錫杖沢をそのまま登って行ってしまったようだ。1時間のルートミスだったようだ。

    
ムラサキヤシオ           ・・・沢

1ピッチ目 さてやっと登攀開始できる。しかしヘルメット忘れた。結局我々のチームが先陣を切ることになった。これまでの下調べの知識から、階段状フェイスに目星をつけ取り付いた。グレードはWなので登攀についてはなんの問題もないが、気を使ったのはカムによるプロテクション。なかなか思ったところにはなく、ランナウト気味になった。今回カムは2セットプラス、極小カムをいくつか準備してきた。フリーの要素も兼ね備えたルートなので、ハーケンとハンマーは持ってこなかった。

   
左:取り付きのシュルンドが危険な状態      右:1ピッチ目


階段状のフェイスから大テラスへ

     

弱点をついて登っていくと大きなテラスに出た。ルートは間違っていなかったようだ。傾斜はそれほどないと思ったが、テラスから下を覗くとかなりの高度感があった。二人を引き上げさて本番はこれからだ。


大テラスから下を覗く

2ピッチ目 トポによるとグレードは5.8。さてこれからが本番だ。トポ通りに一旦左に下がってからフレーク状のクラックに取り付いた。#4と#3でランナーを取り体を外に出してレイバック気味に体を上げた。離陸後フットジャムを聞かせてカムをセットしクラックを抜けた。ルートがわからないのでとにかく弱点をついていくと残置ハーケンがひとつ見つかった。やはりプロテクションが取れないところには残置があった。しっかりとしていたし、ランナウトしていたのでありがたく使わせてもらう。後半にさしかかりルートがはっきりしない。そのまま斜上を続けると終了点が見えてきたがどうやら別ルートらしい。戻ろうとしたが少し登りすぎた。少し戻ったがクライムダウンが怖い。右上に上に開いたクラックが見えている。ここからは見えないが、どうやらその上が終了点のようだ。プロテクションがとれない。ランナウト状態でフェイスをこわごわトラバースし、上を覗くと終了点が見つかった。今度は右に来すぎたのでクラックを諦めフェイスをそのまま登り終了点へ。

       
2ピッチ目の登攀

    
クラックを抜けると2ピッチ目の枯れ木テラス


枯れ木テラスから見下ろす、かなりの高度感

ここは枯れ木のテラスと呼ばれるようだが、他にもどこかのルートにあったような呼び名だ。2ピッチ上がると高度感も増してきた。視覚的な要素で高度感が出てくるのだと思うが、展望も良くていいところだ。スペース的には3人くらいが限界か。ハンギングすればもう少し居られるかも。さてここで選手交代。

   
左:枯れ木テラスの終了点  右:被ったクラック、3ピッチ目の核心


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