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■前尾根@御在所岳(鈴鹿)

アイゼン登攀の練習に前尾根へ

レポート No.774
日時:2014年1月3日
参加者:sskさん、隊長

満天星駐車場(7:50)〜藤内小屋(8:50)〜藤内沢出合(9:30)〜(10:00)前尾根P7(11:30)〜(11:50)P6(12:50)〜(13:10)P5(13:45)〜(14:00)P4(15:25)〜懸垂&トラバース〜P7(16:30)〜藤内小屋(17:10)〜満天星駐車場(17:50)

プロローグ 冬のアルパインはアイゼンとグローブでの登攀が勝負を分ける。練習に前尾根を選んだが、登攀自体は本ちゃんそのものだ。しかしどこからでもエスケープできるので気が楽だ。年末の後尾根に引き続き練習したので、アイゼンで少しは岩に立てるようになってきた。

アプローチ 菰野道の駅でsskさんをピックアップ。満天星駐車場に向かう。降雪後は温泉街の坂道が凍結で登れないことがあるが、今回は雪もなく難なく駐車場まで入れた。整備された駐車場はスカイラインが冬期閉鎖でも入れるようになった。裏道から入る場合もスカイラインゲート入るよりアプローチが短くなったのでありがたい。駐車場は三分の一くらいの入り。準備をして出発した。出発の時点で駐車場の気温はマイナス3度くらい。

   
北谷             藤内小屋のお餅つき

藤内小屋まで歩くと身体が温まった。フーちゃんが駆け寄ってきた。家族と小屋になってきているようだ。玄関口では餅つきの準備が始まっていた。石臼が準備されお湯で暖めていた。いまから餅米を蒸かすようだ。常連さんが何人か集い賑やかになってきた。

   
久しぶりのふーちゃん          北谷

小屋を後にし北谷に入ると藤内壁が見えてきて、気持ちが引き締まる。前尾根のアイゼン登攀ははじめてなので不安だ。出来ればP7、P6はと場したいなと、すでに弱気になっている。しかし藤内沢近づくにつれ、気持ちが徐々に高まりチャレンジ心が大きくなってきた。

    
前尾根                1ルンゼ

P7 1ピッチ目 隊長リード さて、最初のリードをどうしようかと思っていると、隊長からお願いしますと声がかかる。行くしかない。P7はX級で夏場なら何の問題もないが、アイゼンとグローブで登となると、グレードが2段階上がるとおもっていい。見たところ雪も氷も着いていないようだ。スタンスは何とかなりそうだが、問題はホールド。グローブをした手ではカチを取るのが難しい。クラックの出口で行き詰まる。ここはフィーフィーでレストし、出口の雪と氷をピッケルで払い落としホールドを探す。カムを3つ入れてあるのでグランドはないだろうと、思い切って身体を上がる。凍り付いた岩を掴んだグローブが微妙に滑る、いやな感じだ。次は右のスラブでアイゼンが良く滑る。というより、雪が被っているので、スタンスもホールドも全くわからない。まずは雪かきから始まる。カムを入れアンダーがとれたのでなんとかクリア。その後立木にスリングでランニングをとり時間はかかったが、なんとか1ピッチ目をクリア。

      
前尾根P7

   
1ピッチ目終了点でフォロー           核心部でもだえる

P7 2ピッチ目 sskさんリード 3ピッチ目 隊長リード さて2ピッチ目はsskさんリード。ここは出だしから馬の背に乗るまでが核心。フェースに雪が積もってボルトの位置が全くわからない。とりあえず出だしにカムを一つ入れる。左手の岩角でガバがとれるところだが、半分が凍り付いていてグローブが滑る。ボルトは出だしと出口にそれぞれあったはず。フェースを雪を払い一つ目が見つかりクリップして一安心。身体を上げ雪をかくと出口のボルトも見つかった。ホールド探しに時間がかかりすぎる。次は3ピッチ目だが本来は確保せずに通過していたところだが、念のためにロープを伸ばす。ところが情けないことに、1.5m位の岩が乗り越せない。ここも雪を払っているうちにピッケルがかかったので助かった。P7だけで一時間半かかってしまった。このペースでは抜けるには難しいと思いつつP6に進んだ。

     
2ピッチ目の登攀


P7の2ピッチ目の馬の背、雪が着くと怖い

P6 1ピッチ目 sskさんリード 敗退 さてP6だが、ツルベで登っているのでsskさんのリード。リッジルートのグレードはW級。ここもホールドとボルト探しの雪かきが大変だ。夏場ならスイスイ気持ちよく登れるが、雪と氷でまったく勝手が違う。2段目まで上がったところで行き詰まる。何度もアタックするが出繰りの状況が雪で隠れ把握できなかったので断念し懸垂で降り、トラバースでP6をパスした。


P6アタック中

   
P6アタック中

P5 隊長リード グレードは3級と簡単だが、傾斜の緩むところは雪が多く、大半を労力がホールドとボルト探しに費やされる。ここはボルトのないルートでカムが効きそうなクラック探し精を出した。30分以上を費やしてしまい、ビレーヤーが凍り付いてしまいそうだ。P5の頭に立つと中尾根P3をアタック中の3人パーティが見えた。どうやら今日の藤内は、我々とこの3人グループのみの貸し切りのようだ。


P5終了点から北谷と登攀ルートを見下ろす

     
中尾根P3を登攀中のパーティー


中尾根全景

P4 sskさんリード 1ピッチ目 トラバース 2,3ピッチ目を連続登攀 さてここも凹角ルートは3級だが侮れない。クライムダウンするところからロープを出し、まずは2ピッチ目の支点まで。さてここからは2ピッチ40mを一気に登った。凍り付いたところは、アイゼンとピッケルがよく効いてくれるので意外と簡単だ。ここもホールドと支点探しの雪かきに大半を費やされたようだ。2ピッチで1時間半を費やしてしまった。ビレイしていると身体がどんどん冷えてきて、手足が冷たくなってきた。身体をふるわせて暖める。時計を見ると15時30分だ。上まで抜けて中道を下りた買ったが時間切れとなってしまった。懸垂で帰ろう。

    
1ピッチ目のトラバース      2ピッチ目のビレイ地点

   
P4の2ピッチ目

   
3ピッチ目は通過       地上は暖かそうだ

前尾根の冬期登攀はまさに、氷と岩と雪との格闘だ。ふと山麓の街を見下ろすと、そこには暖かそうで安心安全な暮らしがある。我々は油断をすると命がない所に自らの意志で身をおいている。このギャップがあるから生きる意味が実感できるのだろう。


P4の2,3ピッチ目 凹角ルート

    
P4登攀終了


P3、P2を見て退却

P4から懸垂で退却 さて撤退が決まれば、さっさとやろう。早くしないと日没だ。中尾根のパーティーは今度はマイナスの滝をやっているようだ。今日はロープがシングル1本なので、P4を3回に刻んで懸垂。少し歩いてP5を1回で懸垂。P6、P7はトラバースで藤内沢出合に戻った。この時間に歩いて居る登山者はいないが、中尾根の3人パーティーはまだ降りてきていないようだ。


P4の頭にて

   
P4の懸垂

   
P4の懸垂

   
P5の懸垂

夕闇迫る 薄明かりの中藤内小屋まで下ると、小屋の中の団らんが羨ましかった。上がり込んでいっぱいやってそのまま宿泊もいいなと思った。今年の初登りは歩きのスロースタートではなく、厳しい登攀から始まった。無積雪期はロケーションが良く登攀が楽しめる前尾根だが、積雪期は難易度がぐんと上がり、全力勝負となった。今年も心と体を引き締め、山に臨みたい。 完

   
藤内小屋            四日市の夜景

 


 

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