北鎌尾根@槍ヶ岳(北アルプス)2012年8月31日〜9月2日 No.690 とっちゃん、隊長、うさぎ | ページ1 | ページ2 | ページ3 | ページ4 | ページ5 | プロローグ 剱岳八ツ峰、前穂高岳北尾根、それに今回の槍ヶ岳北鎌尾根は日本三大岩稜といわれている。どれも魅力のあるバリエーションルートで、以前から挑戦してみたいと思っていたルートでもある。 今年は日本アルプス登山の集大成としてプランを温めてきた。レポートにも書いたように、先の二つの山行をこなし、今回の北鎌尾根を迎えることになった。「日本登山体系 槍・穂高岳」では、「華々しい歴史をを持つ古典的ルートでありながら、今なお登山の総合力を要求される価値ある一流の尾根」(もちろん冬期でのことだが)と紹介されている。 今回の北鎌尾根のルートは、先の二つのルートと比べると、クライミングの要素は少ないが、アプローチが長く、バリエーションの要素は最も多いルートだと思う。北鎌沢のコルから槍が岳山頂までの稜線は、殆ど平らなところはなく、9時間の岩峰歩きが連続する。体力の消耗を抑え、効率のよい岩峰歩きをするには、クライミングの技術が必要になってくる。また、当然のことだが、ルートを示す目印類は全くなく、ルートファインディングが求められる。ガスで視界がなくなっても、ルートを見極める力も必要だ。ルートを外すと危険度が高まる。逆に稜線通りで歩くとクライミングの要素が高まり、確保や懸垂の箇所が多くなり不用意に時間を消耗する。稜線でのビバークを想定していれば、稜線通りで楽しめるが、今回のように一日で抜けたいとなると効率よく岩峰を巻くことも必要になる。さらに、テント泊装備、クライミング装備、水(天候にもよるが、1人3リットルは必要)を担いで12時間以上2500m〜3100m以上の高所を歩ける体力が必要となる。 ということで、北鎌尾根は、登山の総合力が求められるバリエーションルートだ。 ルート さて、北鎌尾根のルートだが、概ね2通りあるようだ。一つは、燕岳‐大天井岳‐貧乏沢下降‐北鎌沢出合‐北鎌沢のコル‐槍ヶ岳、もう一つは今回わわれがたどった、上高地‐横尾‐水俣乗越‐北鎌沢出合‐北鎌沢のコル‐槍ヶ岳だ。前者は山小屋を利用すれば、軽装備で抜けることが可能だ。もちろん、最低限のビバークの装備は必要だが。また、入山地点と下山地点がちがうので、公共交通機関利用が有利となる。後者は、周回コースになるのでマイカー利用が有利となる。それぞれ一長一短あるが、マイカーが利用できる点、どこでもビバークできるこをと考慮し、後者のルートを採用した。 アプローチ 鈴鹿を朝、3時30分に出発、途中でとっちゃんをピックアップし平湯を目指した。途中おしゃべりに夢中で、名古屋ICまで行ってしまい、ガソリンと時間が無駄になったが、順調に走り8時過ぎ、平湯アカンダナ駐車場に無事到着。日本アルプス詣は最近、剱と穂高に集約されてきたので、通い慣れたルートになっている。前夜車泊が有利か早朝発がいいか、議論の分かれるところだが、今回に関しては前夜車泊で時間的なゆとりを持たせた方がよかったという反省がある。 横尾 少しでも時間を短縮したかったので、駐車場からタクシーで上高地に乗り込んだ。青空の見えるまずまずの天候で何の不安もなく、明神、徳沢、横尾と進み、槍沢ロッジで遅い昼食にした。いつものことながら上高地から横尾までは単調な歩道歩きに辟易とさせられる。ここまで来ると時間が読めるようになり、この先の行程を手中にいれた気持ちになる。 ババ平はテントで埋まり盛況だった。ここをベースキャンプにし、槍ケ岳を目指しているのだろうか。天狗池や東鎌尾根を周回すると変化のあるコースが楽しめるだろう。さて槍沢ロッジからしばらく進むと水俣乗越分岐(大曲)に到着した。ここからが大変だ。上高地からここの分岐まで6時間で緩やかに高度を上げてきたが、ここから水俣乗越までは容赦のない登りになる。覚悟を決めて登り始めた。 水俣乗越 このルート、あまり使う人は多くなさそうだが、意外としっかりとしていた。地形を利用しうまく高度を上げていっている。荷物満載のザックを背負いながらの登高は辛いが、熟したベニバナイチゴをつまみながらマイペースで高度を稼いた。適度に小休止を入れ、1時間30分で水俣乗越に到着。時計を見ると16時40分になっていた。ここからはバリエーションルートになり、想定以上に時間がかかりそうだ。それよりも、遠くの雷鳴が不気味だ。長居はできない。 概略図 天上沢 ずるずるとスリップしながら急斜面を降りていく。踏み跡はしっかりとしていた。草付き斜面から灌木帯に入り、しばらく降りると雪渓が残る涸れ谷と合流して、この辺りから傾斜が緩むが、雨が当たりだしたので、合羽を着て雨に備えた。黒い雨雲が天を覆い、雨粒が大きくなってきた。遠くで稲妻が光る。本降りになりそうだ。早く北鎌沢出合まで降りたいが、雨にぬれた岩を拾いながらの沢下りは容易ではない。30分も下ると涸れ沢に水が流れ出し、一気に増水しそうな雰囲気だ。そうなるまでに北鎌沢出合まで下りたい。だけどどれだけ降りても到着しない。GPSで現在位置を確認。間違えていない。まだまだ先だ。間の沢出合いを確認。この時点でヘッデンを点灯。沢も増水し始め、何度か渡渉を余儀なくされ、中州での孤立にも注意を払わなければならなくなってきた。大粒の雨に打たれ、暗闇の中の沢の下降となった。最悪だ。先着パーティーのテントを見つけた時にはほっとした。乗越から2時間でやっと北鎌沢出合いに到着。 北鎌沢出合 さてテントの設営場所だが、更に沢の増水が懸念されるので、不用意に設置はできない。対岸にもいくつか設営スペースはあるようだが、暗闇と雨とガスで何も見えない。先着パーティーの隣りに少しスペースがあったので、無理やり2張設営した。お隣は横浜から来たご夫婦のようで、貧乏沢を下り16時に到着し、たき火をしていたら雨が降り出したとのこと。水がなかったので30分かけて汲みにいったらしいが、今は目の前の沢で容易に水が汲めた。ご夫婦の情報によると数パーティーが入っているようだ。雨が小降りになったすきにテントを設営し、中に潜り込んだ。濡れた服を着替え、ほっと一息ついた。初日から厳しい行程となった。概略図 | ページ1 | ページ2 | ページ3 | ページ4 | ページ5 |
|
2012年9月3日 Copyright (C) 2012 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |