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ゴロ谷の捜索@御池岳(鈴鹿) ファイナル 2012年4月28日 No.664   ホーム


宇賀渓谷無料駐車場集合 7:00
御池橋 出発 8:55
アザミ谷分岐 9:12
三の沢出合 9:40
ボタンぶち 12:30〜13:46
四の沢枝尾根発見場所 14:24〜16:00
ゴロ谷4尾根出合 16:51
アザミ谷出合 17:08
御池橋 17:25

  
御池橋の本部              ゴロ谷

 捜索活動は座礁に乗りあげつつあった。そこに貴重な情報がもたらされた。御池橋を基点にし、御池岳南西斜面の第1尾根を登路に、第4尾根を下降路にし、周回した単独者が4月18日、第4尾根の上部1040m地点?で赤色のオーバーグローブ(右手)を拾ったのだ。

 早速、本人のものかどうか調べたところ、遭難1週間前の鈴北山行のブログに赤のISUKAオーバーグローブをつけて弱層テストをしている写真が掲載されていたのだ。また、Nさんの日記を見ると、年末に購入していることが分かってきた。

 一筋の光が御池岳南西斜面を照らした。捜索本部が綿密な捜索計画を練り上げ、4月28日に実施されることになった。捜索は、テーブルランドからゴロ谷へ落ちる谷と尾根に集中して行った。二の沢隊3人は、二の沢を遡行しながら枝尾根を調べ、頭源部まで高度を上げ、950m付近からの急斜面をトラバースしながらテーブルランドまでを捜索する。三の沢隊(たいちょう、とっちゃん、うっちー、たけだくん)は三の沢から入渓。本流隊4人は途中で2グループに分かれ、1グループはそのまま本流を詰め、残りのグループが第4尾根のすぐ東の谷に入った。(結果としてこの隊が発見することになった)

 三の沢隊は、われわれ4人。上部で二又になっているので、そこで2グループに分かれる予定だ。荒れた谷だ。50m標高を上げると右手に15m位の滝が落ちていた。念のために滝壺を確認に武田くんが斜面を這い上がり覗き込む。異常なしだ。この滝が右又だったが、この時点ではわからなかった。そのまま本流を進むと再び滝が正面に現れた。実はこれが左又だった。これも巻けそうにないので、左岸尾根斜面を這い上がることにした。なんとかロープを出さずに這い上がると、谷を分けている枝尾根であることがわかった。この滝を尾根から巻き、とっちゃんとたけだくんが左又の谷に下降した。

  
険悪な三の沢

私とうっちーは右又の担当なので、トラバース気味に下降を試みるが厳しい。懸垂で谷に降りようかと思ったが、その先にもう一つ滝があるし、なんとか谷底が目視できる位置をキープしながら上流を目指した。徐々に谷が浅くってくると同時に第4尾根が近づいてきた。谷に降り、さらに登ると第4尾根に吸収されていった。バイケイソウが群生する明るい二次林で、所々に炭焼き窯跡が見られた。深く自然に食いこんでいる人の痕跡に驚かされる。


三の沢の滝

 さて、捜索範囲の確認のため、二の沢隊と本流隊に無線連絡を入れた。われわれは、第3尾根と第4尾根の間を担当することになった。二の沢隊は上部のガレ場に手こずり、本流隊の左又グループは厳しいトラバースを強いられているようだ。

  
穏やかな四の尾根中腹部

 第4尾根が急斜面に吸収されていくあたりの標高は1000mだ。グローブ発見地点は1040mだから、いよいよこれから核心部へと入っていく。左又隊のとっちゃんと武田君と合流し、等間隔で4人が並びジグザグに見落としのないように移動しながら上部を目指した。上部に行くにつれ傾斜が増してきた。大小の石が堆積し、どこかの石を外すと岩雪崩が起きそうだ。土砂の上にも浮き石が乗り、大きな石でも手をかけると動く。落石の巣のような状態で、早く通過したいが見落としがあってはいけない。


四の尾根中腹部

 標高1050mを通過するあたりで本流隊から、左又のさらに左又でストック発見の報が入る。前後してモンベルステラリッジのテント袋が見つかったようだ。本部からその近辺の集中操作の指示が入る。もう一点何か見つかれば、全捜索隊をそこへ集中させるとのこと。われわれは指示が入るまで、捜索を続行することになった。与えられた任務を完了し、二の沢隊とわれわれ三の沢隊はボタンぶちに集合し、山上支援隊と合流した。


四の尾根の上部、傾斜がきつく、落石多い

 御池橋の本部からは無線で待機の指示。とりあえず昼食にする。おにぎりをほおばりながら無線を聞いていると、本流隊から「珍しい鉱物が見つかりました」と無線連絡が入った。これはあらかじめ決められていた秘匿通信だ。Nさんが見つかったのだ。御池橋の本部との交信が急に忙しくなった。家族の方も聞いておられるので、言葉を選ばなければならない。GPSの位置情報の報告をコピーし、GPSで発見地点を確認。左又が更に分岐しその谷を分けている尾根のようだ。ボタンブチから地形が確認できた。本部からは無線で待機の指示が入った。

  
天狗の鼻             アズマイチゲ

 1時間待機した後、山上の任務を山上隊に任せ、われわれ捜索隊は現地サポートのため、発見場所まで降りることになった。天狗岩とボタンブチの間をまっすぐ降りた所が現場だが、落石を落とすといけないので、われわれは天狗岩の西側から下降し始めた。案の定、落石を落としながらの下降となった。トラバース気味に下降し、後続から落石をまともに受けないようにした。標高が1000mを切った辺りからトラバースを始めた。現場に近づくと枝尾根の白いテントが見え始めた。あそこだ。第4尾根からは2つ谷を挟んだところだった。標高900mの現地で本流隊4人と合流した。


ゴロ谷上流部、第4尾根の東の谷の枝尾根で発見


ボタンブチにて

 警察には連絡がついたようだ。ヘリがくるまで現地で待機となった。下山の時間を考えると待機にも限界がある。線香を焚き御経を唱え、冥福を祈った。やがてヘリが到着、黄色のツェルトを広が位置を知らせた。ヘリは旋回しながら高度を下げ、頭上でホバリングし、現場の様子を観察しているようだ。収容するのかと思ったが、そのまま帰って行った。もう一度、準備を整えて出直すらしいが、結局その日には収容と搬出はできなかった。われわれ捜索隊は16時に第4尾根に移動し下山した。


ツェルトを広げヘリに合図を送る

  
長い一日だった、ゴロ谷本流にて

 

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