2012年2月26日 犬帰し谷@御池岳(鈴鹿) ホーム |
■犬帰し谷右俣〜丸尾(鈴鹿)2012年2月26日 No.651 utty、とっちゃん、とおるさん、りんちゃん、隊長 〜不明者捜索のために再び犬帰り谷へ入った〜 我々は今回、先週に引き続き、犬帰り谷を捜索した。前回は本流に沿った捜索で、冷川岳1054まで付き上げる谷の捜索にあたった。犬帰り谷は、一言で済まされるほど単純な谷ではない。上部に行くほどいくつとも谷が分岐し、どこの谷でも同じだが上部ほど狭まり傾斜も厳しくなっている。特に県境稜線までつき上げる数本の谷が厳しく、全部を確認するのは困難だ。県境稜線から下を覗き込むと誤って落ちない限り、この谷を下ろうとは思わないだろう。しかし、誤って落ちることは考えにくい。すべてを探し尽くし、探すところがなくなったら候補に挙がるかもしれないが、今のところは除外していいだろう。 話は逸れたが、我々は今回、犬帰り谷の右股に入ることにした。カタクリ峠から右岸尾根を下った場合、迷い込む可能性があるからだ。 1 捜索エリアの目安となる観点はいくつかあると思う。まず第一に考えなければならないのは、不明者の考えられる行動パターン。不明者の山の履歴、技術、体力、経験などから、ある程度予測できる。 ・一般登山道しか歩いた経験がなく、地形図とコンパスでバリエーションを歩くことは不可能。 2 次の観点は、事故の起こりやすい危険エリアはどこか。要因は、滑落と雪崩が考えられる。滑落は岩場からと雪面を滑り落ちることが考えられる。 3 当日の天候(2月12日6時の概況) 冬型の気圧配置になっていて、顕著ではないが太平洋側に寒気の吹き出しが、気象衛星画像から確認できる。春の気配を感じる移動性高気圧が近づいてきている。天気図には表れていないが気圧の谷にそって、雨雲が見られる。平野部の気温は12日7時、東近江で0.7℃、東北東の風1m/sであった。御池岳山頂部では、気温-7℃であったことが推測できる。風は昼ごろに強くなり平野部で7m/s程度だった。以上から判断すると、低温ではあったが、風雪はあまり強くなかったと思われる。しかし、低圧部の接近により、山頂部はガスで隠れていた。登山者の証言からも明らか。 4 数少ない12日の目撃情報などをもとに、捜索エリアを絞り込む ・12日朝、6時33分に自宅に今から下山すると連絡を入れている。 ・藤原岳8合目で見かけたという情報があるが、真偽のほどは定かではない。 5 直後の捜索情報をいかす。13日に捜索が行われているので、野営地の痕跡、トレース情報は有力だ。 ●2月26日の捜索について 犬帰り谷右又の捜索 さて本日捜索した犬帰り谷右股だが、そこに入るまでが難儀だ。まずは右岸尾根に取り付き急斜面を這い上がらなければならない。先週は雪が付いていたので歩きやすかったが今週は、完全に雪が解けており、ぬかるんだ斜面はよく滑り不安定だった。斜面にとりつくとすぐに息があがった。余計なことを考えず、肩で息をしながらひたすら登るしかない。 標高650mまで上がると傾斜が緩む。犬帰り谷がわの斜面に移り、トラバース気味に高度を下げ、谷に降りなければならないが、この斜面がかなりの傾斜だ。雪が固まっていて、踵でステップをきり、慎重にクライムダウン。確保なしなのでスリップは許されない。最後の15mはロープを使って懸垂。ちょうど右股の分岐付近に下降できた。苦労して稼いだ標高を100m捨てた。 さて右股谷だが、カタクリ峠右岸尾根に沿った谷で、最後はカタクリ峠付近の県境稜線につき上げている。分岐から稜線までの標高差が350m、登山道なら1時間ちょっとで登れるが、大岩が転がる谷はたやすくは登れない。大岩の転がる雪で埋もれた谷芯を避けたいが、両岸の傾斜がきつくトラバースも難しい。雪で埋まっているが、水流のある谷なので油断すると雪面を踏み抜いてしまう。腰まではまると足を抜くのも大変だ。そんな時は、ハイハイで手と足に体重を分散すると効果的だが、5mも進むと息が上がってくる。 200m進むと谷が分岐し、少し谷が広くなってきた。ここは右股に入る。徐々に谷は浅くなり両岸の岩尾根が近付いてきた。時計を見ると12時になっていたので、ささやかな昼食タイムとした。りんちゃんがボイルウィンナーのピーマン包みを持ってきてくれた。不明者のNさんご推薦のやつだ。これはうまい。いける。皆が口をそろえた。ボイルしたウインナーを生のピーマンで挟んだだけだが、ピーマンとのマッチングが絶妙だ。昼食を20分に切り詰め任務に復帰。標高830m地点までくると再び谷が分岐。無線機は2台。私ととっちゃんが持っているので、ここで2班に分かれた。
あと100mだが、最後の傾斜がきつい。凍り付いた雪面をキックステップでけり込み、ピッケルを突き刺して確保。スリップは許されない。もし滑りだしてしまうと、ピッケルによる制動は困難だ。高速滑り台で谷底へ、とならないように肩で息をしながら慎重に高度を上げていく。やっと稜線に到着したほぼ同じにとっちゃん班が到着。残念ながら手掛かりはなかった。本部に無線で捜索報告し、以後の行動指示を仰ぐ。予定通り冷川岳までの県境稜線をチェックし丸尾で下山とのこと。 冷川岳まで来ると、真の谷を中心の捜索していた別動隊と合流した。この隊はコグルミ谷で下山するようだ。テーブルランドではまだ、捜索が続いているようで、本部との無線交信がさかんに行われていた。テーブルランド隊はローラ作戦後、鞍掛峠から下山するようだ。峠から国道へ降りるときは滋賀県側もチェックという指示が入っていた。我々は冷川岳から下山にとりかかった。まずは雪稜を歩きP906へ。そこからが急降下だ。踵でステップを切りながら気持ち良く下って行く。 「あれー」とりんちゃんの声がしたかと思うと、足をすくわれ転倒。ピッケルを雪面に差し込み事なきを得たが、りんちゃんはそのまま滑り落ち、立木に激突(本人が描いた絵)。10m位で停まったので事なきを得たが、冷や汗ものだった。険悪な犬帰り谷では気を張り詰めていたが、集中力の緩んだ隙をねらってアクシデントは起こるものだ。気を引き締めて下山続行。 P673で本部へ無線定期連絡をし、痩せ尾根を渡り寒山へ。久し振りの寒山だ。ここから少し二重山稜になっているので注意しながら、白瀬峠登山口目指して下山した。無線で状況報告をすると、車の回収のための送迎をしてもらえることになった。ありがたい。登山口に到着するとすぐに迎えの車が到着し、車を回収して本部に戻った。懸命な捜索にもかかわっず、手掛かりさえつまめない一日となった。疲労の色は隠せなかった 。 残念ながら26日の捜索でも手掛かりはなく、今後の捜索の目途が立ちにくい状況に追い込まれた。今後の方針を本部で話し合った。 ハンディー無線機のアンテナ、長くした方が受信感度がいいよ、のりやくんからアドバイスがあり、早速注文した。 |
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