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2010年1月24日 迷岳(台高)

 

迷岳(台高)2010年1月24日 No.529 隊長、うさぎ
〜大台町八知山林道から迷岳へ〜
林道駐車地(9:10)〜登山口(9:35)〜稜線(10:12)〜口迷岳P1224(10:27)〜桃の木平(10:33)〜見晴台(11:02)〜(11:27)迷岳(12:00)〜見晴台(12:27)〜桃の木平(12:57)〜口迷岳(13:19)〜駐車地(14:11)

プロローグ 「楽に登れるし、ブナも多いし、展望もいいし、なんで今まで連れてきてくれなかった」と言われた。山というのは最初の第一印象が大切だ。初版の取材で、迷岳への登路として検討していたが結局、誌面の都合で紹介しなかったことが気がかりでいた。サブコースにするにはもったいないが、本編を削ってまで紹介するに値するコースではないだろうか。
 今週末は天気がいいので、鈴鹿北部山岳では、樹氷見物で歓喜の声が上がるだろう。しかしまだまだ、期限を切られた取材が残っているので、心の中に葛藤を残したまま南へ向かった。

アプローチ 大宮大台ICで下りて宮川に沿って里中まで走る。国道422のトンネルは今も通行止めで、対岸の道路を走るようになっているのは、5年前の取材と変わらなかった。ここから林道は八知山線に入る。さて今回はどこまで登っていけるか。前回は、道路崩壊のために中腹から歩いた記憶がある。車を降りてから約1時間かけて駐車地まで歩いた。今回は所々に落石はあるものの、難なく駐車場まで上がることができた。ただし、林道は未舗装であるので、スローで走らないとタイヤを切ってしまう恐れがある。

 
左:登山口  右:高木層は落葉樹、低木層にはシキミやツルシキミが見られる

林道は上がるにつれ、うっすらと雪化粧していた。要所には地元有志の道標が設置されていて、初めてのものでも安心して駐車まで行けるだろう。タイヤ跡があったので、先行者がいるのかもしれないと思ったが、林道上部からは消えていた。きっと昨日のものだろう。駐車場の標高は約1000mで、気温は0度だが、風がなく穏やかな天気だ。準備を済ませて林道を歩き始める。駐車場から登山口へは林道があるが、崩壊箇所があり、整備されいないので通行はできない。この林道を20分ほど歩くと登山口に出る。ここから道幅の狭い作業道が分岐していて、登山道はこの道をたどっていく。

 
ミズナラ            千枚岩

作業道は稜線直下を通っている。標高は1000mを越えているので、高木層はブナ、ミズナラ、ヒメシャラ、ミズメ、コハウチワカエデ、ホオノキなどの落葉樹が優先している。一方、低木層は、アセビ、シキミ、ツルシキミの常緑樹が目立った。

  
シキミ             ミズメ

稜線 さらに20分ほど作業道を歩いて行くと稜線への登り口がある。登山案内と丸太を使った手作りの階段が設置されているので見落とすことはないだろう。稜線までは踏み後がはっきりとしないが、斜面はアセビやつげなどが少し生えている程度なので見通しがよい。

  
稜線のブナ         稜線へ上がった所

口迷岳 稜線に上がると一気に展望が開けた。振り向けば宮川流域の山々と大台ヶ原や大峰まで見渡すことができる。北側は飯高町で、並列して伸びる山脈上には、三峰山、修験業山、局ケ岳が一望できた。さてここからが尾根道となる。シロヤシオ、ミズナラ、ブナ、ヒメシャラの豊かな樹林が続いている。このあたりも林業の盛んな地域だが、植林を免れているのがありがたい。但し、標高点1224(口迷岳)までの北側はカラマツの植林になっている。このカラマツ林は台高の所々で見られるが、どこも育ちが悪く、やせ細っているので、材としての価値は見いだせないだろう。
 なだらかに高度を上げていくと、「口迷岳」の俗称をもつ標高点1224を通過する。表示がなければ知らずに通過してしまうだろう。「口」とつくのは迷岳へむかう入り口にあるからだろうか。迷岳から振り返ってみると、このピークがはっきりとわかる。


稜線から見る飯高町と三峰山

桃の木平 そして、標高点1224から降った所が、「桃の木平」の俗称を持つ所だ。地元山岳会の標識が立てられている。それほど広がりのあるところでもないが、普段からテント縦走を遣っている山人にとっては、野営適地として見落とさないだろう。ただし、位置的な利用価値は別問題としてだ。このコバのいわれだが、なぜ「桃の木」なのかわからない。宮川流域を見ても「桃」のつく地名は見あたらない。ましてや、栽培種の桃の木はないだろう。但し「桃」の字のつく樹木は、胡桃(クルミ)がある。となるとサワグルミか。しかしサワグルミは沢や谷でないと見かけないのでオニグルミだろうか。また課題が1つできた。


古ガ丸山、遙か遠くに大台ヶ原


ヒメシャラとシロヤシオ

見晴台 桃の木平を過ぎてしばらく進むと、所々で露岩が見られるようになっている。このあたりの地層は中央構造線の南側にあたり、秩父古生帯、三波川帯の地層だ。文献を調べると迷岳は、三波川帯に入っていて、堆積岩が変成作用を受けてできる千枚岩が多いようだ。所々で石灰岩らしきものも見られる。サンプルを持ち帰ったので酸をかけて検証したい。いずれも太平洋で堆積したものが、プレートで運ばれ日本列島にぶつかり造山したものだろう。古生代といえば今から2億年まえで、木が得なるほどの長旅のすえにここ迷岳まできた。昨年は隣の白倉山から古ガ丸山を往復したが、典型的なチャートがたくさん見られた。あそこも古い地層で、古生代のものだろう。話はそれたが、行く手を阻む大岩を回り込むと見晴台と呼ばれる展望の良いところに出る。残念ながら樹木が邪魔をして迷岳は見にくいが、南側の展望は抜群だ。遠くに熊野灘が光り輝いていた。

  
植林されたカラマツ            熊野灘を望める 


見晴台から見る迷岳


白倉山1236と江股ノ頭1269.6

迷岳 さて見晴台を過ぎると、緩やかな登りにさしかかり、山頂手前は急斜面になっている。ブナを見ながら登っていくと、知らないうちに山頂に着くだろう。基準点は二等三角点で正確には1308.78m、点標名は「迷ケ岳」となっている。地形図は「迷岳」で登山者もそう呼んでいる。これはよくあることで、たとえば、御在所岳は御在所山だ。ここの点の記がいつ設定されたのか、調べないとわからないが。おそらく最初は明治の頃だろう。時代とともに変わっていくのもおもしろい。
 山頂には誰もいなかった。こんなに天気がいいのに、多くの登山者はこの時期、樹氷見物に東奔西走していることだろう。風も弱くすばらしい晴天だが、標高が1300mを越えているのでじっとしていると寒くなってくる。ダウンを着込み、鳥のさえずりを聞きながら昼食にした。食後、稜線を少し散策してから来た道を戻った。 完

  
山頂手前から口迷岳を振り返る      樹氷をつけた明神と桧塚


迷岳山頂


のんびりと稜線を引き返す宮川流域と

  
宮川流域と度会の山々

 

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