2007年7月28日29日 蓮華岳、針ノ木岳(北アルプス) |
■蓮華岳2799m、針ノ木岳2821m(北アルプス)2007年7月28日29日No.417 隊長、うさぎ 「最新俳句歳時記」に「駒草」があり、「高山帯の砂礫地に生じ、高山植物の女王と言われる」とある。・・・・女王と皇后とでは語感が違う、女王はトランプの女王でなくて、やはり、エリザベス女王や女帝マリー・アントワネットのように、男子をしのぐ権力と勢威を持ったものでなくてはならないような気がする。そして私は、そういう意味での印象を、コマクサの花からひとつも受けない。細くこまかく分かれた葉はいかにも弱々しく、手荒には扱えないもろさを感じさせ、馬の長い顔に似ているなどと言われる花は、子馬にもロバにも似ていないと思う・・・・蓮華岳は、針ノ木峠の東の稜線伝いにあって、レンゲソウのようにコマクサがたくさん咲いている。白馬より黒岳より、コマクサ平よりその花は多く山の斜面を被っているが・・・・花の百名山「田中澄江」より引用 先週が悪天候のため今週に順延しての山行となった。東海までは梅雨が明けたようだが、長野はまだ梅雨が明けていないようだ。天気予報では、28日が曇りで29日が雨となっていた。いつもなら、このような芳しくない天候でしかも、高山テント泊の場合は、中止するのが普通だが、花は待ってくれないので雨覚悟で計画を実行した。ふたを開けてみると、初日の午後が雨に降られ、二日目の午前はなんとピーカンの天気になった。山の天気はわからない。 車泊ということで雑音をさけるために、下の扇沢市営駐車場に車を入れる。駐車のための広いスペースは、すでに3分の1くらいの車で満たされていた。駐車場の端の静かなところに車を入れる。23時少し過ぎていたが、朝までぐっすりと休むことができき、4時半に時計のアラームで目が覚める。準備をして5時頃に出発した。
針の木岳への登山口はゲートの左側にある。森に入るとひんやりとして清々しいが、ひと月ぶりに担ぐテント装備のザックがやけに重く感じられる。体がなじんでくるまで少しかかりそうだ。車道を4度ほど横切る。ここまでは観光地の雰囲気があるが、ここから先は登山者の領域になる。頼れるのは、自分の足と山頂を目指す強い意志だと思う。
登山口から大沢小屋までは、緩やかな樹林の登りになっていて、枯れた谷やいくつもの枝沢を横切りながら進む。それほど規模は大きくはないがブナやミズナラの豊かな森が続いている。樹林内ではタマガワホトトギスがよく花をつけていた。日当たりのよいところは花が多く見られ、ヤマハハコ、ヒヨドリバナ、キオンが、緑の多い中で彩りを添えてくれている。 このあたりまで来るとやっと、ザックの重さが体になじんできた。小屋を過ぎて20分ほど樹林を歩くといよいよ、針の木雪渓が見えてきた。設計の下部の方は雪が解けて所々に河原が見えているが、その上はしっかりと雪が残っているようだ。左岸から徐々に雪渓に降りて行く。草つきの斜面が広がり、ニッコウキスゲ、コバギボウシ、アカショウマ、ヤマブキショウマ、シモツケソウ、クガイソウ、ミヤマキンポウゲなどの常連が花の咲かせていた。 ひざしは強いが風があるのですごしやすい。ただこの風は、低気圧の接近に伴う風のようで、夏のさわやかな風とは質が違うようだ。天気予報では、今日一日は何とか天気が持ちこたえてくれそう予報だったが、山の天気は地上よりも早く変化するのであてにはならない。朝方は針の木の稜線が青空をバックにすっきりと見えていたが、雪渓から見上げると、黒っぽい雲が足早に駆け抜けている。峠に上がって、テントの設営まで何とか持ちこたえてほしいものだ。 一息入れ、アイゼンを装着して雪渓に下りる。雪質もよくし、6本アイゼンがしっかりと雪面を捉えてくれる。斜度も北岳の大樺沢よりも緩やかなので、ピッケルも準備してきたが、ストックだけで大丈夫なようだ。雪渓を駆け下りてくるひんやりとした風が体を冷やしてくれる。雪渓上に点在する石や岩を見ると、落石の不安が頭をよぎる。なるべく前方を見て歩くように心がけるが、辛くなると足元ばかり見つめて歩くようになってしまう。1時間半ほどの登りで、右岸の夏道に取り付くことができた。ここで一息入れる。 ここからは稜線を間近に見上げることができるが、稜線が近づくにつれて徐々に斜度が増し、きつい登りが続くようになってくる。ただ、目標が明瞭になってくるので、気力も充実し、足にも力が入ってくる。ただひたすら高度を稼ぐことに専念する。振り向くと胸のすく高度感が充実感への変わっていく。峠が近づくと、登山道脇にチングルマが多くなってきた。花は見頃だが、しゃがんでカメラを構えるゆとりもないし、道幅も狭いのでのんびりとカメラも構えていられない。そんなことよりも、峠まであと100m程の所で雨があたってきた。テント設営まで持ちこたえてほしかったが、天候ばかりはどうにもならない。急いで受付をしに小屋に入る。ここのテント場、場所指定になっている。受け付けた順にテントの大きさなどて場所が決められる。この日は最下段の奥から3つ目くらに割り振られた。雨風のあるときは下のほうが有利だ。急いでテントを設営し、フライの張り綱をするゆとりもなく、とりあえずはテントの中に逃げ込んだ。雨が小降りになるのを見計らって、テントをしっかりと固定する。今夜は風雨が強くなりそうだ。一息入れて昼食にする。
雨が上がるのを望んだが、どうやらしばらくは降り続きそうな気配だ。午後からの時間は十分にあるが、見切りをつけてテントを出て蓮華岳に向かう。峠からは岩場の痩せ尾根の急登が始まるが、ガスのためにまったく高度感がつかめない。ハクサンシャクナゲがきれいに咲いていた。2752mの標高点が近づくにつれて、コマクサが現れてきた。砂礫地の緩やかな斜面がコマクサで埋め尽くされている。実に見事な群生だ。ガスのためにどれだけの広がりがあるのかつかみづらいが、見える範囲の斜面はすべてコマクサだ。「蓮華岳は、針ノ木峠の東の稜線伝いにあって、レンゲソウのようにコマクサがたくさん咲いている。白馬より黒岳より、コマクサ平よりその花は多く山の斜面を被っているが・・・・」花の百名山「田中澄江」より引用 珍しく、白色のコマクサを見つけたので、笠をさしてしゃがんで撮影している、強風に笠を持っていかれてしまった。あれよあれよという間に、風に飛ばれ谷底へと消えていった。雨風はレインウェアで凌げるが、撮影には雨傘が必需品だ。デジタルカメラは電子機器の塊なので、雨にはすこぶる弱いはずだ。 あまりにも見事なコマクサの群生を見たせいか、他の花の印象が薄れてしまう。同じく岩礫地を好むタカネツメクサ、 キスミレ、タカネシオガマ、イワベンケイの花が雨にぬれていた。 2752mの標高点を過ぎると、ガスの切れ目から蓮華岳を垣間見ることができた。何人かの登山者とすれ違った後、標高2799mの蓮華岳山頂に立つ。ガスで展望が利かないが、去れ基地の斜面がコマクサで埋められてるのがよくわかる。まさしく、田畑の蓮華草のようにコマクサが咲いている山だから、蓮華岳なのだろう。ハイマツすらない山頂だが、風が避けられる斜面に腰を降ろし一息入れる。天気がよければこの花園にもっと居たいが、風雨の中ではそうもいかず、早々に引き上げる。 テント場には14時にもどり、小屋に水とビールを仕入れに行く。たくさん雨が降っているのに、皮肉なことに水は有料だ。テントに入り一息入れる。雨の日は雨具の置き場などビニール袋は必需品だ。シュラフに入り体が温まるとすぐに夢の世界に入っていったようだ。激しくテントを打つ風雨の音や、隣のテントの賑やかな話し声も気にならず、ぐっすりと夕方まで昼寝をした。 18時過ぎに目が覚めたので、しばらくしてから夕食にする。寝ていてもおなかはすくもで、健全な生活をしているからだろうか。本日のメニューは、野菜のトマトジュース煮、高野豆腐、秋刀魚の缶詰、赤飯、大根としいたけの煮物だ。1泊なのでリッチにいける。
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