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2007年3月17日 鈴鹿山麓 美杉

 

鈴鹿南部、美杉の山麓散策 2007年3月17日

 今日は伊吹を予定していたが、どうやら冬型が戻り降雪の可能性も出てきたので、午後から鈴鹿南部、美杉を回ることにした。鈴鹿南部に関しては、先週からまだ1週間だが、シロバナネコノメソウが終盤を迎えている。トウゴウサバノオもちらほらで、まだ蕾もあるのでもうすこし見られそうだ。


鈴鹿南部で撮影2007/3/17

 さてシロバナネコノメソウだが、ハナネコノメソウとの区別が難しい種だ。三重県レッドデータブックを見ると、いずれの種も記載されていないので、絶滅危惧種に上げられていないことがわかる。
 まず植物図鑑の元祖的存在の、「牧野 新日本植物図鑑」(北隆館)で調べてみる。すると、ハナネコノメソウ(chrysosplenum stamineum)は取り上げられているが、シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)は掲載されていない。chrysosplenumは、ネコノメソウ属のこと。同じく北隆館の「原色牧野植物大図鑑」も同じで、シロバナネコノメソウは扱われていない。それでは山渓ハンディー図鑑はというと、ハナネコノメソウやキバナハナネコノメソウの母種がシロバナネコノメソウという扱いになっている。学名を見てみる。
  シロバナネコノメソウ(chrysosplenum album)
  ハナネコノメソウ(chrysosplenum var.stamineum)
  キバナハナネコノメソウ(chrysosplenum var.flavum)
となっている。 var. がつくということは、変種であるということを表しているので、シロバナネコノメソウが母種であることになる。
 まず記述の詳しい、牧野新日本植物図鑑でハナネコノメソウについて調べてみる。


●ハナネコノメソウ ユキノシタ科 ネコノメソウ属
花猫の目草:花の白さが特に著しく感じるのでこの和名がつけられたようだ。
【生育地】
関東および中部の山間の谷川の縁に生える多年草:牧野図鑑
福島県から京都府に分布:ハンディ図鑑
生育地に関しては、地域的なものや、山間の谷川の湿地については一致している。一方シロバナネコノメソウは、分布域が近畿地方、中国地方、四国、九州となっている。ちょうどこの三重県のあたりで分かれていることになる。昔から西と東は、関ヶ原で分かれるようだが、植物に関しても、同じようなことがいえるのかもしれない。
【茎】
花茎は、高さが5センチ内外。直立して頂端部に花序がある。その他の茎は花が終わってから根の近くから出て、四方に伸びる。黒っぽい紫色を帯び 細くて水分を多く含み軟らかく白色のちぢれ毛がある。


鈴鹿南部で撮影2007/3/17


【葉】
小型で葉柄がある。一般に対生であるが、時に互生も混じる。円卵形。鈍鋸歯。黒っぽい緑色。
【花】
花茎の頂端に、2、3個の花がまばらにつく。早春の頃開く。花弁はなく、ガク片が白色で4個。直立し鐘状に開く。ガク片は長蛇円形で先端は鈍形。縦の脈がはっきりと見える。おしべは8個。花糸は細長くガク片より長く直立している。やくは、紫黒色の点状。めしべは1個で、花柱は二つに分かれる。さく果。


鈴鹿南部で撮影2007/3/17

  シロバナネコノメソウ(母種) ハナネコノメソウ(変種)
分布 近畿地方、中国地方、四国、九州 福島県から京都府に分布
花期 4,5月 3,4月

ガク片は斜開し、先がとがる
やくは、暗紅色。

ガク片は、まるみがあり先はとがらない
やくは、暗紅色。牧野では、紫黒色。
  走出枝は暗紅色を帯びる
扇円形で鈍鋸歯が6〜9個 卵円形で、葉の鋸歯は3〜7個

総合的に判断してみると、花がシロバナネコノメソウで、茎と葉は、ハナネコノメソウの特徴を備えているようだ。母種が少しずつ変化していると見ることができる。

●トウゴクサバノオ キンポウゲ科 シロガネソウ属
鯖の尾:両側に張り出した袋果の様子に基づく
【生育地】
既知の生育地点は10以上だが、各生育地の個体数は50未満。生育地は、いなべ市、亀山市、伊賀市、津市、松阪市など(三重県レッドデータブック2005)
暖帯林中に生える多年生草本。谷川沿いの湿地に生えるので、河川改修による減少がある。
本種は何種類かあるシロガネソウの仲間だが、三重県内では他の種類はないように思われるので、その意味からも希少といえる。
【茎】
草全体は柔らかく、無毛である。高さは10センチほどで、ひと株から3、4本の茎が出て、葉よりも高く斜めに伸び上がる。4稜、汚紅色。上部に2個の包葉が対生する。包葉は柄が短く3出。
【葉】
根本から生え、葉柄のもとに軟骨状の鞘がある。3出あるいは、鳥足状の5出。小葉は円卵形で縁に鈍きょ歯がある。
【花】
4月頃、茎の先に淡黄緑色の花を開く。細い花柄がある。
がく片は5個で花弁状。花弁は黄色の密槽状となりがく片より短い。おしべ15個内外。袋果は6月で、熟して水平状に開く。

 

●ユキワリイチゲ キンポウゲ科 イチリンソウ属
雪割イチゲ:雪の中ですでに芽が出ているから。ルリイチゲの別名がある。キクザキイチゲにも同じ別名がつけられている。
【生育地】
準絶滅危惧種、各生育地の個体数はそれほど多くない。県内では、津市、伊賀市、松阪市、多気町、度会町、大台町、伊勢市。やぶ陰に生える多年草で、湖畔林の林床、すぎ林の林縁、神社の境内などに生える。開発や治水工事により減少。
【茎】
根茎は地中を横にはい、多肉で紫色を帯び、ひげ根を出す。
早春の頃、葉よりも高い10センチ内外の茎を1本出し、茎頂に葉状包を3個つける。無柄で卵状被針形で2〜3の欠刻がある。
【葉】
葉は根生し、長い柄があって立ち、平開する無柄の3小葉からなる。小葉の先端は鋭形で、不ぞろいの鋸歯がある。両側の小葉は左右不同形。葉の上面は濃緑色、褐紫色の斑紋がある。裏面は紫色。無毛で草質。11月頃に新葉を出し冬を越す。

【花】
包の中心から、細毛のある1本の花柄をまっすぐに立て、その先に花を一個つける。花は日が当たると開く。上部はやや白色、下部は淡紫色を帯びている。ガク片は15個くらい線状楕円形、花弁はない。おしべは多数で黄色。

 


ユキワリイチゲ


ミヤマカタバミ


ミヤマカタバミ

 

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