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池木屋山(台高)2004年1月10日

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池木屋山(台高)1395.9m 2004年1月10日 No.245 隊長、うさぎ

宮の谷林道終点(9:10)〜(10:05)高滝(10:15)〜猫滝上部(10:45)〜奥の二俣(11:15)〜(13:07)池木屋山山頂(13:44)〜宮の谷林道終点(16:45)

日帰りで登り4時間、下り3時間はかなりハードだ。この行程のうちで緊張を強いられるのは時間にして、3時間以上ある。高滝の高巻はもちろん危険だが、凍結の箇所が多くあり、山頂から二股までの1時間15分の降下はアイゼンが必要だ。全般的に体力が必要なのはもちろんだが、長時間集中できる精神力も必要である。凍結した急斜面は失敗が許されない。春と秋ならば、もう少し楽な山行となるだろう。

 

 当初は三峰山の八丁平の樹氷の撮影のつもりで飯高町へ向かった。国道166号線から時折見える台高山脈は白く冠雪しているし、好天にも恵まれているので、いい写真が撮れそうで、期待も膨らんでいた。ところが地元の飯高町から見上げる三峰山には全く雪がなく、急遽行き先を変更することになった。

このあたりの私の担当山域は、三峰山の他に迷岳、桧塚、池木屋山などがある。時間はすでに8時間を過ぎていて、16時の下山を考えると行動時間は7時間だ。まだ取材ができていないのは池木屋山だったので、行き先を池木屋山に変更した。17時には絶対に下山を完了したいので、凍結や積雪の状況から山頂を断念する場合も計算に入れてこの山に登ることにした。

 徒歩の場合は蓮ダムを渡り蓮川右岸を進むが、途中で通行止めの箇所があり、左岸の道路に渡り返さねばならない。右岸は舗装されていて車の通行も可能だが、車で登山口まではいる場合は、蓮ダムから左岸の道路を進み赤色の辻道橋を渡ってそのまま蓮川左岸を進み、宮の谷出合から橋を渡り林道に入る。終点手前で未舗装になるが、すぐに林道終点に到着する。林道終点手前では林業者のが材木の搬出作業を行っているので、迷惑のかからぬように安全を確認して通過したい。

 林道終点は、駐車ができる空き地があるが、つめても10台で満車になるだろう。終点には小屋と宮の谷渓谷の案内板や登山届けボックスが設置されている。昭和50年の国体で整備された桟橋や階段が老朽化したために近年になり新しく整備されたようで、網橋35、桟橋3、階段15がかけられている。


崩落箇所を沢から迂回するが、良く整備されている

 ほとんどのものはしっかりとしていて安心して利用できるが、一カ所だけ崩落箇所があり、沢に降りて迂回するようになっている。また、行程の説明では、犬飛び岩7分、鷲岩16分、蛇滝29分、六曲屏風岩38分、水越谷出合55分、高滝70分とある。本日の目標の池木屋山までの距離は6200mとなっている。



六曲屏風岩

 六曲屏風岩に代表されるように、両岸だ切り立った断崖になっていて、橋や階段がなければ沢を歩くしかない。高滝までならハイキング気分で秘境の清涼や滝見物だできるようになっている。春や秋のシーズンには多くの人が訪れるのだろうが、この日の入山者はどうやら我々だけだったようだ。


岸壁に取り付けられた桟橋


代表的な網橋、これが35箇所ある

 風折れの滝分岐から約20分で、核心部分に迫ってきた。登山口からは約60分のところに高滝がある。登山道から断崖を見上げるとつららが解けかけていて、氷の固まりが落ちてきている。足下を見るとデブリ状になっていて、いつでもよけられるように上を見ながら急いで通過した。


高滝

 落差60mの直爆だということだが、近づくにつれて迫力が増してきた。休憩を兼ねてしばしの撮影タイムとなった。このコースの一番の難所はこの高滝とその上にある猫滝の高巻だ。案内板によると高巻に30分を要するようだ。積雪、凍結に備えて、アイゼン、ピッケル、ザイルを準備してきたが、日当たりのよい所なので、登攀用具は使用しなくても通過できそうだ。最初はザレた斜面をジグザグに登るが、要所にはフィックスロープがあり、足下のグリップを確認しながら高度を上げていく。問題の箇所は岩場をトラバースぎみに登る所だ。何本ものフィックスロープがあり、その上には小さな仏像が設置されている。滑落事故のあとに設置されたようだが、いつも登山者を見守っているようだ。昨年の秋(10月12日、飯高町の掲示板にhttp://www.town.iitaka.mie.jp/ご家族の方の書き込みがあり、その日の情報を探しておられます)にも滑落事故があり、中年の男性が亡くなっている。フィックスロープはしっかりとしているが、基本は足のグリップだ。3点支持を意識しながら難所を通過した。しかし、問題は登りよりも下りの方がはるかに危険だ。


高滝の上にある猫滝

高滝の上には猫滝があり、これの高巻にも注意が必要だ。この二つの滝を過ぎると谷筋に平坦な道になり、途中でドッサリ滝の音を聞き、約30分で奥の出合に到着する。平坦地がありテント泊ができそうだ。さてここから、池木屋山から降りてくる急な痩せ尾根をたどることになる。山腹をジグザグに登り、痩せ尾根に乗る。この当たりから積雪が気になりだした。雪の下が凍結しているので、グリップを確かめながら力を入れる。何とかかアイゼンなしでも行けそうなので木の根に掴まりながら登っていく。上部は積雪が予想されるので、山頂までに2時間は必要である。帰りに3時間はかかるので、遅くとも13時には折り返す必要がある。


この尾根の多いコウヤマキ


コウヤマキ

ここから2時間で登れたとして、昼食休憩は15分だ。傾斜のゆるむところがない登りだ。ヒメシャラ、シャクナゲ、シロヤシオ、コメツガ、コウヤマキなどの巨木、老木に感心しながら無心で登る。上部は行くにつれ積雪が増してきて、膝下まで足が潜り込み始め、速度が徐々に鈍ってきた。1100,1200mと上がるにつれタイムリミットが近づいてきている。1300mを過ぎるとブナの密度が濃くなり山頂が近いことがわかるが、積雪に阻まれて思うように進まない。タイムリミットの13時を7分ほど過ぎてしまったがなんとか山頂に到着できた。(時間の予測を間違えると山中ビバークを覚悟しなければならない。うさぎの友達が、91.11.23にその日のうちに下山できず、山中ビバークとなり、大騒ぎになったそうだ。暗くなってからの高滝の通過は危険すぎるので、ビバークの判断は正しかったと思う)


1200m付近


山頂付近のブナの疎林


池木屋山 山頂

 山頂からの展望は貧しい。迷岳の方が少し開けてる程度だ。山名の由来になった池があるそうだが、尾根散策の時間がなくなったので、次回の課題にしておこう。登山道が交差する山頂は、展望こそ恵まれないが、ブナ林に囲まれたちょっとした広場になっていて休憩によい所だ。日帰りでは大変もったいない所だ。昼食時間が15分というのはあまりにもかわいそうなので、予備の時間を15分使い、13時45分出発することにする。座り込むとぐっと冷え込んでくる。 13時45分に下山を開始する。奥の出合までのアイゼンをつけての降下に神経を使う。思った以上に時間を消費する。問題は高滝の通過だが、これも無事に通過し、ほっとする。暗くなったときのためにヘッデンを準備し、網橋35、桟橋3、階段15を渡り、16時45分に駐車場にもどった。次回はシャクナゲ、シロヤシオ、アカヤシオの咲く頃に登りたい。

 

2004_1_10