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雨乞岳(鈴鹿)2003年10月11日

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雨乞岳(鈴鹿) 2003年10月11日 No.230 なっきーさん、あさおさん、すずむらさん、隊長

武平峠(8:17)〜(8:51)コクイ谷分岐(8:55)〜(10:6)コクイ谷出合(10:18)〜(10:59)鉱山跡散策(11:23)〜(11:41)杉峠(11:45)〜(12:19)雨乞岳(13:03)〜東雨乞〜七人山(13:43)〜沢谷分岐(14:44)〜武平峠(15:44) 歩行距離9.63km 行動時間7時間24分

 取材も大詰めになってきた。9月は天候に恵まれ順調に予定をこなしてきたが、今回は午後から天気が悪くなり、山頂での撮影が思うようにいかなった。しかし、紅葉が始まり、大変歩きやすい季節になってきた。鈴鹿の季節到来である。

 予定通りいちばん遅れて武平峠の集合場所に到着した。すでに皆さんは集合していた。駐車場は残りスペース一台分になんとか車を滑り込ませた。天気もあまり良くないのであまり人が入らないだろうと思っていたが、御在所岳や鎌ケ岳への最短コースでもあるので、本日は登山者が多いようだ。本日のメンバーは4名で、小グループのために小回りが利き軽快に歩けそうだ。
 鈴鹿の山と谷を読むと、コクイ谷周辺にはあまりいい印象を抱けないが、武平から雨乞岳のピストンでは物足りないときなど、コクイ谷をからませると一気にバリエーションが増してくる。
 山歩きには最適の季節になってきたので、最初から軽快に歩く。沢谷の乗越を過ぎた辺りで 、先行者の声が聞こえてきた。ひと汗かいたところで、コクイ谷分岐に到着し、ひと息入れる。


コクイ谷分岐

 西尾本のイメージからは憂そうとした谷を想像するが、こじんまりとした雰囲気の良い谷だ。登山道といっても沢の中の石を拾って歩くことが多いので、水量のあるときは歩きにくいのかもしれない。例年はヤマシャクヤクの花の咲く頃に何度か歩いているが、秋もなかなかいいものである。要所で赤ペンキのマークがあるのでそれに従えば迷うこともないだろうが、倒木が放置されたままなので、通行の障害になっている。


コクイ谷

 クラ谷との合流地点までは起伏も少なく倒木以外は歩きやすいが、合流地点で沢が一段降りているので歩行注意である。初めての方は赤ペンキに忠実に従って慎重に降下したい。このあたりはシャクナゲも多く、コクイ谷に落ち込んでいる滝もきれいだ。また左岸にはイワカガミが多いので花の季節が楽しみだ。鈴鹿の山と谷に、コクイ谷の中ほどに鉱山跡ありの記述があるが、どのあたりのことだろうか。少し広まったところに、一升瓶や錆びて穴の開いたフライパン、湯たんぽなど、当時の生活を匂わせる物品が散乱した所があるが、あのあたりのことだろうか。


コクイ谷

 コクイ谷の両岸にはアケボノソウやトリカブトが見られるが、たまたまフクオウソウが咲いているのを見つけた。うつむき加減に咲く地味な花だが、ご当地の福王山の何ちなんだ和名なので、特別扱いしたくなる花だ。またダイモンジソウも花の時期を迎えていて、岩場で風に揺れる様子を何度か目にした。


フクオウソウ


ダイモンジソウ


コクイ谷のアケボノソウ

 コクイ谷については、鈴鹿の山と谷を読む限りにおいては色々とミステリーがあるようだ。昔は千種街道という主要幹線道路からの枝道だった。今でこそ登山者のみの道になっているが、昔のように多くの人が入ると、人の世のしがらみまで持ち込むことになる。人がもっとも恐れるのは人であり、精神世界の問題だろう。

 出合いに近づくと大きく谷の左岸を巻くところがある。炭焼きの釜跡が多く残り、二次林が大変美しい。大きなトチノキの下で実を探すが、すでに動物たちの胃袋に収まってしまったようだ。大きなアケビの皮が散乱していたので見上げると大きなのがぶら下がっているが高くて採れなかった。



コクイ谷のトチノキ

 小屋跡の石垣を過ぎるとコクイ谷出合いに到着する。御池谷からの沢とコクイ谷からの沢の合流地点になっていて、広々として明るい。誰しも休みたくなる所だ。我々もここで小休止。なっきーさんにミカンをいただいた。まだまだ果物がおいしい季節だ。岩場にはたくさんのダイモンジソウが咲いていたい。本日は水量がないので徒渉が楽だが、5人もいると誰かが沈没する。本日は全員セーフだった。


コクイ谷出合


コクイ谷出合で小休止


コクイ谷出合

 このあたりの標高は約750mだ。武平峠下の駐車場の標高が877mだから、アップダウンを繰り返しながら徐々に沢の流れとともに下ってきたことになる。出合いから少し行ったところで、単独の登山者と出会った。話を聞くと、私たちと逆周りをしているようだ。


祠の跡か?

鉱山跡を目指して徐々に高度を取り戻していく。美しい二次林が続き、春はヤマシャクヤクが多い。御池鉱山跡へ向かう分岐の尾根を乗り越すと、左手に雨乞岳の念仏ハゲが見えてくる。出合いから約40分で鉱山跡に到着した。廃村というとあまりいいイメージが湧いてこないが、明るい二次林のなかの建物の石垣には歴史ロマンが感じられる。千種街道が主要幹線として使われていた頃はどのような人々の暮らしがあったのだろうか。


階段

 普通なら雑木に隠されていきそうな建物跡だが、登山者の休憩場所になっているのか、いつ来ても見晴らしのいいところだ。しばらくの間鉱山跡を散策し一息入れてから杉峠を目指した。何人かの登山者が杉峠から降りてきた。やはりコクイ谷から帰るそうだ。多数決をとると、我々が逆周りをしているのだろうか。普通なら村を過ぎてから右手の尾根に乗るところだが、今回は谷をまっすぐの登ってみた。ガレ場の急登にスリップしながら峠の下に出た。


杉峠で

 杉峠では何人かの登山者が休憩をとっていた。風が強くなってきたので、西側で昼食をとっている女性二人組もいた。紅葉はまだ早いと思っていたが、すでにシーズンに入っているようだ。


杉峠の紅葉


東雨乞岳 紅葉が始まっている

 さてここからの登りがちょっときつい、山頂までの標高差は約200mあるが、最初の100mの樹林の急登がきつい。勾配が緩んだところから笹が出始め展望が開けるが、風が強くて飛ばされそうだ。突風にあおられるとバランスを崩しそうになる。西側で風を避けて昼食場所を探すことも考えたが、いい場所がないのでそのまま山頂を目指した。笹を分け池のほとりを回り込むと山頂にでる。満席だ。大きな団体さんの昼食が終わったところだ。帰るのをしばらく待って昼食にした。天候は明らかに悪化している。風は止まずガスが出始めるや雨の飛沫が飛んでくる。早々に腰を上げて東雨乞に向かった。


山頂を目指す


雨乞岳から東峰を見る


東雨乞

 記念撮影をして、笹のトンネルを七人山のコルへ急降下した。せっかくきたので、七人山に顔を出した。昨年のテント泊からちょうど1年、様子はまったく変わっていない。今日のコースでいちばんにいい場所だと、始めてきた人の感想が聞かれた。ここのブナ林は貴重だ。


七人山へ

 コルへ戻りクラ谷を下る。何度か小さな沢を徒渉し、クラ谷と分かれる。斜面が崩壊し枝沢の上部を巻いて小尾根を乗り越し、沢を少し下ると朝のコクイ谷分岐に出る。このあたり枝沢にはシャクナゲが多いので、花の時期が楽しみである。そのまま通過し、沢峠の乗越を過ぎると国道の工事のけたたましい音が聞こえてきて、現実の世界に戻った。

 

2003_10_4