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藤原 坂本谷 鈴鹿 2003年2月23日

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藤原岳(鈴鹿)2003年2月23日(日) No.198 隊長

 春の花の開花とともに、山の計画も花へとシフトしたいが、まだまだ冬山にも未練がある。さてどうするかと悩んだ末に、坂本からの入山を決意した。入山禁止にはなっているが、紹介できるかどうか見極める必要があったからだ。あくまでも取材のための入山であったので、HPでの公開は躊躇したが、事実としてあげることにした。結論から先に言うと、入らない方がいいのではなく、入っては行けない所だと感じた。

もしどうしても福寿草が見たいなら、木和田から入り、福寿草の多い700m付近まで降りて、再び登り返して来た道を戻る手がある。700から800m付近の福寿草が多いところでは、比較的落石を受ける確率は低い。といってもこのあたりは昔から落石が多かったので注意しすぎるくらいでちょうどいい。
  何年か前の土石流で谷の様相は一変し、花が咲き乱れた頃の地形的な手がかりすらなくなっている。崩壊も少し落ち着いたかに見えたが、また昨年の大雨で荒れたようだ。
 谷の入り口には真新しい砂防堤が二つできている。二つ目の砂防堤には鉄のはしごがついていたが、落石を受けたのか、手すりはなくなり板も曲がっている。これを乗り越え石で埋め尽くされた谷に降りる。まずは谷が二つに分かれる所までが問題である。昔、滝があったところからしばらくは谷が狭くなり、ここで落石があった場合、逃げようがないところだ。いきなり土砂や倒木、人より大きな石で行く手を阻まれる。土砂や石を見ると崩壊して間がないようだ。とにかく早く通過したいので、耳をそばだてながらピッチをあげる。谷の分岐点に着く頃には汗だくになっていた。これで第一関門を突破できたことになるが、これから先も危険箇所が続くので気が許せない。分岐点からはしばらくは傾斜もゆるいが、徐々に谷の幅も狭くなり傾斜もきつくなってくる。常に待避を考えながらルートを選ぶが、逃げる場のないところの方が多い。落石を受けるのは確率の問題で、白馬の大雪渓よりもかなり確率は高そうだ。谷を離れるまでに何度も落石の音を聞いた。とにかく早く谷から離れたいところである。600mを過ぎたあたりから福寿草が咲き始めている。

 ここのところめっきりと暖かくなったので一気に花が開いたようだ。誰もいないのでたっぷりと時間を使って撮影にかかる。谷から100mほど斜面を登り撮影していると、また落石だ。大きな音を立てて谷めがけておちてゆく。デポしたザックを近くを通過していった。
  このあたりから800mにかけて福寿草がとぎれることがないが、殆どはつぼみの状態だ。これから2週間くらいで一気に咲き上がりそうだ。ここまでは誰にも会わなかったが、前からご夫婦が降りてきた。朝から谷に入ったそうだが、目の前で大きな崩壊が起こったので、谷はあきらめ木和田から回り込んだとのこと。眼の前で崩壊をみたら、誰しも撤退するだろう。


 頭上の高圧線がビュービューと唸っている。このまま稜線に出るとゆっくりと食事ができそうもないので、日だまりで昼食にする。少しゆっくりとしすぎたか、藤原からの下山が微妙になってきた。行ける所まで行って判断しようと、山口分岐から登りにかかる。昨夜の雨で雪質が悪い。よくすべるのでアイゼンをつけるが、あまり効果がない。高度を上げるにつれてスノーシューがほしくなってきたが、本日は車のなかで待機してもらっている。今日はミレーのキャプサンのシェークダウンも兼ねている。長身でも肩にうまくあっていて、担ぎやすい。そこで携帯が鳴った。じんじんさんからだ。やはり山ちゃん御池だったようだ。節分草の在処を伝える。そうこうしているうちに時間がなくなってきた。頭に到着したのが2時45分だった。藤原を経由するとどう考えても3時間はかかる。しかも順調に歩けてのこと。テルモスのお湯でインスタントコーヒーを飲みながら思案する。それで結論は、常識的に判断して、木和田から下山した。鉄塔の足のところにチタンのカップを忘れてきたのが悔やまれる。誰かが拾って届けてくれないかな?

 


2003_02_23