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藤原岳(鈴鹿) 2003年1月11、12日

 

藤原岳(鈴鹿)2003年1月11日(土)、12日(日) 藤原岳テント泊 No.192 隊長

 11日 神社下の駐車場(12:50)−八合目(14:45)−避難小屋(15:30)−天狗岩(16:30)

 12日 天狗岩(8:00)−藤原登山口休憩所(10:33) *時間は休憩、撮影を含む

 朝、夕の山の様子を撮影したくて、テントを担いで天狗岩に陣取った。雪上のテント泊は不慣れなために不安はあったが、装備さえ整えば問題なし。気温はぐんぐん下がっていったが、寝袋の中は暖かい。好天のために、星と夜景を堪能できた。

 今回の山行は、朝と夕方の山の写真がほしかったので、テント泊になった。朝と夕方を狙うには、これが一番の得策のようだ。しかし、テント泊は慣れてはいると行っても、無積雪期でのこと。雪中泊となると、いつもとは勝手がちがう。雪よりも寒さ対策をどの程度するか、そのあたりの手加減というかノウハウがわからない。

 16時には天狗岩でテント設営を完了したいので、逆算して11時前に自宅を出発する。準備は朝8時から始め、ゆっくりと準備をしたらこの時間になった。天気がいいので心も弾むが、いきなり手袋を忘れ、家に引きかえす。30分のロスタイム。12時半に西藤原駅の到着し、新しくなった駅舎を見物する。駅舎全体が列車の形をしていて、随分とユニークな作りになっている。


西藤原駅

 今日は荷物があるので、神社下の駐車場まで乗り込むことにする。料金は300円。このあたりはどこも同じ料金で、自己申告制というか、料金箱に自分でお金を入れることになっている。休日ともなると朝や夕方は登山者で賑わうが、この時間帯は閑散としている。天気も穏やかで、聖宝寺の長い階段を大きなザックを担いで登ぼり始めるとすぐに額に汗がにじんできた。日帰り登山でも余分な物がたくさん入っているので人よりは重いと思うが、やはりテント泊となると、肩に食い込むような重さである。荷物の分だけいつもよりペースを落としているせいか、調子よく足が前に出てくれる。1合目からは積雪があるが、アイゼン無しでいける。3合目まで進み小休止。ザックを降ろすとスッと体が軽くなる。時計で所要時間を確かめると、いつもと変わらない時間できている。テントは苦ということで、いつもより気持ちが張りつめているからだろうか。

 6合目からはぐっと雪が多くなるが、トレースがしっかりとしているので、問題なく前進できる。7合目付近は谷筋なので、1m近い積雪があるが、これもトレースの助けてもらう。トレースがないときは少しコースを外してしまうが、6合目にあたりに降りて来ている尾根に乗ると歩きやすい。もちろん花の時期はコースを外してはならない。


八合目

 休憩を入れて約2時間で八合目に到着した。冬場は表登山道の利用が多いようで、裏道は誰とも出会わなかった。9合目までの冬道は傾斜がきついので、ここでアイゼンを装着。荷物が重いのでアイゼンの効果は認めざるを得ないが、どうも右のアイゼンが効き具合がおかしい。調べてみると、後ろ2本が折れて欠落していた。いつ折れたのかはわからないが、かれこれ5年は使っているので、そろそろ買い換え時だろう。小屋までに2,3人の登山者とすれ違った。いつもなら登山者であふれている小屋周辺も、15:30分ともなると、もう誰もいない。小屋に入って一息入れる。テルモスのお湯でインスタントコーヒーを入れて、甘納豆を食べる。


避難小屋


小屋前の積雪

孤高の人を思い出した。主人公の加藤文太郎は甘納豆を主食のように食べていたのだろうか。と、ふと思ったが、あまりのんびりしている時間がなくなってきている。陽が傾き、山のコントラストが増してきた。予定では日没前に天狗岩まで行き、テント設営後、夕焼けのシーンの撮影が待っている。トレースを頼りに先を急ぐ。稜線では岩や灌木の陰が長くのび、昼間とは違う雰囲気を醸し出している。この時間にこのあたりを歩くことはまずないので、見慣れた景色ではあるが、随分と新鮮に感じられる。


霊仙山

 しっかりとしたトレースに助けられて、なんとか日没までに天狗岩に到着できた。ただ、トレースはしっかりとしていても、ひとたび雪にはまりこむと、荷が重いので脱出が大変だ。天狗岩に到着したのはタイムリミット寸前である。明るいうちにテント設営をしたいが、日没は待ってくれない。雲が多くなってきたが、黄昏の雰囲気は十分伝わってくる。撮影もそこそこに設営地点を物色する。テントの中から朝日が見えて、水平で、風がよけられる所がみつかり、早速基礎工事かかる。風が避けられるところは、必然的に雪がたまっているので、基礎工事が大変だ。設営のスペースを踏み固めるのに、10分以上はかかる。基礎工事もそこそこにテント設営にかかる。雪がなければ簡単な作業だが、これも思ったより時間がかかる。ペグが全く効かないので、いわなっちさんに教えられたとおり、木の枝にロープを巻き、雪に埋める。要領が解れば作業も捗る。設営を終えてテントに潜り込んだときは、どっぶりと日が暮れ、ヘッドランプなしでは食事の準備もできなかった。


天狗岩(雪庇に要注意)


夕日に染まる藤原岳


天狗岩の積雪

 えびすビールが美味い。肉体労働をしたご褒美だ。昔、炭焼きに従事していた人たちは、これよりも重い荷物を担いで、山を下りたり登ったり。到底、真似はできそうにないなと思いながらビールをいただく。
 本日のメニューは定番の「ちゃんこ鍋」。豚肉、野菜、ちゃんこ鍋の素があれば、誰にでも簡単にできる。冬場は暖かいものに限る。煮炊きをするとすぐにテントの中も暖かくなってくる。食事を済ませ時計を見ると18:30になっていた。外に出ると、名古屋や四日市方面の夜景がきれいだ。また、こんなに星があったかと思うほど、夜空には星が輝いている。三脚なして撮影はできないが、雪で簡易の三脚をつくり、シャッターをおす。光をとらえるのに約15秒ほどかかるようだ。すべてカメラ任せだから、どうなることやら。5分も外にいるとぐっと冷えてくる。テントの寝袋に潜り込む。薄い銀マットの上にエアマットが敷いてある。何しろ踏み固めた雪の上だから、なんとか熱を逃がさない工夫だ。基礎工事がいい加減だったので、ゴツゴツして寝心地が悪いが、下が雪なのである程度膝で押し込むことができる。寝袋の中は暖かい。ダウン800グラムで、ー20℃までのものだ。しかしテントの中は外の気温とさほど変わらないだろう。吐く息が真っ白になる。


四日市の夜景


 たぶん、今この山域にいるのは自分ひとりだろうと考えると、少し寂しくなってくる。ラジオをつけて、イイチコのお湯割りで暖まる。
 気がつくと、初夢にうなされ、目が覚めたようだ。時計を見ると00:30になっていた。初夢はなんと、「テントを鹿に踏まれて、テントがぐちゃぐちゃになった夢」だった。もう少しまともな初夢が見たかったが、状況から判断して妥当な夢だったかと思う。天狗岩で天狗にさらわれる夢の方がよかったかなと思うが、中年のおじさんをさらったところで、なんの利用価値もないので、まず天狗にさらわれることのないと思う。などなど、馬鹿なことを考えていると目が冴えてきた。と同時にお腹もすいてきた。ラジオをつけるとオールナイトニッポンをやっていた。深夜放送など、ここのところ30年は聞いていなかったので、普通は懐かしいはずだが、話題がついていけないので、雰囲気だけ楽しむ。コーンクリーム、コーヒーとチョコでお腹を落ち着ける。暖かい物ばかりほしくなる。ペットのお茶はじゃりじゃりに凍り付いている。少し風が強くなってきたようだ。フライシートがばたばたとやかましい。時折、氷のような雪がテントを打つ。風の音に耳が慣れた頃に寝入ったようだ。6時の目覚ましで目が覚める。

 外を除くとガスの中である。日の出に期待をしていたが、一面が銀の世界である。テントもフライシートに霜が着いたように真っ白になっている。観念してゆっくりと朝食にかかる。メニューはアルファ米と中華丼、食後のコーヒーである。7時過にもう一度外の様子を伺うが、どうやら回復の見込みがない。やむなくテントを撤収し、避難小屋に向かう。
  途中トレースが乱れていたので、正規のコースに修正しようとしたのはいいが、膝を越えるラッセルが待っていた。これだけの荷物を担いのラッセルはかなり力を消耗する。アルプスでの遭難事故は後と立たないが、稜線で動けなくなるのは、ラッセルで体力を使い切ったのだろう。ひと汗かいた頃に避難小屋に到着した。まだ、誰も登山者はいない。テルモスのお湯でコーヒーをつつくり、またまた甘納豆を食べる。一息ついてから、下山にかかる。9合目の手前で今日初めての登山者とである。8合目を過ぎたあたりから、何人もの登山者と出会った。皆さん雪の具合が心配なようで、山頂の状況を何度も聞かれた。10:30無事に下山した。藤原岳登山口休憩所が完成間近のようだ。福寿草の咲く心にはたくさんの登山者で賑わうことでしょう。


藤原岳登山口休憩所

 

 

2003_01_12