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子の泊山 No.189

 

子の泊山 2002年12月23日 No.189 隊長

 浅里登山口(10:45)ー子の泊山ー浅里登山口(15:10)

 浅里小学校という銘を刻んだ石版が岩にはめ込まれている。明治7年と書いてあり、歴史のあ小学校だ。しかし、今はこの学校に通う子供はいない。グランドも木造の校舎もよく整備されているが、何年か前に幕を閉じた学校だ。隣には矢淵中学校浅里分校があるが、この分校も廃校となっている。林業が盛んなころはかなりの生徒がいたと聞くが今はその面影はない。

 


熊野灘


 今日は子の泊山に登るために、はるばる三重県最南端までやってきた。熊野灘は穏やかで、青空の下に広がる砂浜を見ていると、まるで南国のようだ。しかし遠い所だ。自宅の鈴鹿からだと、距離にして200キロ、時間にして約3時間40分かかったことになる。熊野川が県境になっているて、子の泊山の全容を見るためには熊野川を渡って新宮に入り、熊野川に沿って国道をしばら走し、登山口になっている浅里の対岸に位置しなければならない。標高は約900mで、稜線上にはいくつもコブがあり、どれが山頂だか確認できない。

ガイドブックでは登りが2時間40分とある。時計を見ると10時を過ぎているので、あまり時間的なゆとりはない。急いで対岸の浅里に回ることにする。浅里へは数年前に一度訪れていて道の様子はわかってはいたが、予想以上に時間がかかり、浅里に到着したのは10時30分だった。


対岸から見る浅里と子の泊山

林道は廃校になった小学校のすぐそばからのびているが、どうやら工事をしているようだ。通行止めと書いてある。ここから歩くとどうしても1時間はかかるので、時間的に無理があるようだ。とにかく行けるところまで行こうと林道を登り始めると、すぐに舗装工事が行く手を阻んでいた。道路の真ん中に砂が山のようにもってあり、どう見ても通過できそうにない。しかしここから歩くとなると、慣れた山なら暗くなっても山頂往復はできるが、初めての山ではちょっと不安だ。工事をしている人に話してみると、少し待ってくれたら、重機でならしてあげようといってくれた。帰りもまた声をかけてくれといってくれた。ありがたや!ありがたや!
 おかげで11時前に登り始めることができた。登山口は林道分岐点から左の林道を50mほど進んだ所にある。立派な新しい案内板が立っているので見落とすことはないだろう。しかしその案内板とは裏腹に、道はあまり踏まれてなく、入り口からどれが登山道だと迷うほどであった。これも大土ブックの通りである。いつ取材したのだろうと考えながら歩き始めた。地形図を見る限り、典型的な谷を詰めるコースである。右岸からはいるすぐに渡抄して左岸のコースをとる。道は枯れた杉の枝に覆われているので踏み跡も隠されている。足元ばかり見ているとすぐにコースを外してしまうが、目印はしっかりとつけてあるので、常に先を確認してルートを決めれば不安はない。左岸をしばらく進むともう一度右岸に渡り返しそのまま谷を進む。登山口から約40分で行く手を阻む衝立岩に到着した。そこには衝立岩壁の滝があった。ここがコースの分岐点になっているが、この滝を巻いて谷を進むコースがどこにあるかわからない。ガイドの通り「山彦新道」に入る。いった急勾配の細い尾根に乗り、そのままヤケぐらまで登り切る。勾配もかなりあり、稜線の手前では固定ロープがないと登れないほどである。しかしこの固定ロープ、少しくたびれてきているのであまり過信はできない。このコースの醍醐味はここにあるのだと思う。


ヤケぐら


 標高差300mを一気に稼ぐと稜線に出る。ヤケぐらはのこぎりのような尾根だ。ここまでくると一気に眺望が開ける。眼下には熊野川、その流れを目で追っていくとすぐに熊野灘が見えてくる。「思えば遠くに来たもんだ!」また稜線を目で追っていくとこれから進むコースが確認できるが、どうやら山頂は稜線の向こうにあるようだ。


山頂

 多少の起伏はあるが、道幅もある登山道を山頂へ向かう。鈴鹿であれば葉を落とした夏緑林は明るく、木々の間から山々を除くこともできるが、ここ南紀では標高900m付近は照葉樹林になっているので、登山道は薄暗く展望はない。平坦な道なので短時間で距離を稼ぐことができ、30分ほどで山頂付近まで到達した。前方の稜線が明るくなったので、岩場かなと思い近づくと、なんと林道である。高度計を見ると900mになっていて、山頂の標高が906.7mだから、この林道は殆ど山頂付近まで通じているようである。これには愕然として、今までのバリエーションに近いルートはなんだったのかと思い返すのが精一杯であった。林道から山頂までは歩いて3分ほどの距離であった。このような状況ではあったが、自分の足で歩いた充実感は消えない。

 


大峰方面

 天気がいいので遠くまで見える。北東を見ると左手に大峰、少し右に角度をかえると台高のようだ。東をみると熊野灘が一望でき、ガスで水平線が確認できない。登山者には誰にも会わなかったし、山頂に1時間ほど居たが誰も登ってこなかった。静かな山旅だ。帰りは他のルートも考えたが、長時間林道歩きを敬遠して来た道を戻ることにした。約1時間半で車まで戻った。その後、新しくできている林道を車で登ってみることにした。途中までは舗装されていたが、その後は地道になりかなり荒れている。稜線近くまで高度を上げたが、林道が分岐しているところで引き返した。山頂まであと1キロほどの所だった。

 


飛雪の滝

 山を下りてから飛雪の滝見物をした。 落差30mで水量のある勇壮な滝だ。さて、ちょうどいい時間になってきたので、熊野市のビジネスホテルに向かった。

 

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