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孫田尾根岳(鈴鹿) 2002.3.2 No.145

 

孫多尾根(鈴鹿) 2002.3.2 No.145 new

 貯水槽(9:25)−神武祠−丸山−草木−P965(13:20)−草木−丸山−神武祠
 林道に出てしまった車に戻るのに60分かかった(17:30)

 行きはよいよい帰りが悲惨。丸山手前で北東に張り出す尾根に乗っかってしまい、しばらく降りて引き返す。ショートカットしたつもりが、堂々巡りになってしまった。30分のロス。そして最後の仕上げは、神武祠から一本北の林道に降りてしまって回り込むのに1時間かかった。
 丸山までは、始末の悪い灌木帯と丸山の急登に難渋したが、それからの尾根はすばらしかった。花はというと、丸山付近にはセツブンソウ、フクジュソウが咲いていたので、時間を忘れて撮影に没頭し、40分ほどの時間とフィルム1本を消費した。

 

 いつもの時間に目を覚ます。山屋にとっては遅刻である。言い換えると重役出勤と言うことになる。今日は自分にとって初めての尾根に入るので、少し気持ちが引き締まっている。地形図と磁石は必修であるので、もう一度カメラバックの中を確かめる。しかし、最近のガイドブックにはないコースなので、取り付きが不安である。車もお腹をすかしているので、ハリマオさんの店で車を満腹にして、清水氏の地図を借りる。おまけに御在所周辺のでかい地図をいただく。かたじけない。お陰で迷わずに墓地の隣の貯水槽に到着する。誰もいない。当たりまえか。このコースをやるのは限られた人たちだ。
 尾根に取り付くまではどうもややこしそうだ。磁石と地図で自分の進むべき方法を確かめながら植林帯を進む。所々に目印はあるが、踏み跡はうすい。P387までは結構な登りだ。なんだか足が重たい。気持ちと体がうまく連動していない時の状態だ。つまり、少し気持ちが逸っているらしく、足が少しオーバーワークのようだ。そうこうしているうちに387を通過し、のるべき尾根を意識しながら先へ進む。このあたり地形図を見るかぎり、少しややこしいそうだ。しばらくして尾根に出た。この尾根はこれから先ずっと南西斜面は切れ落ちている。青川の林道が直下にみえるほどの高度感だ。あちらこちらで倒木が目につく。何年か前の大きな台風のためだろう。根こそぎやられている。足下には石灰岩が目につきだしたが、歩きにくいほどではない。藤原岳の花の多さはこの石灰岩にあるのだから、当然花への期待が膨らむ。


ヒロハノアマナ


気の早いカタクリの葉


 日当たりのよい尾根にヒロハノアマナの葉と、トリカブトの根性葉が目についた。やはり期待どおりだ。よく捜してみるとヒロハノアマナが一輪だけ花を開いていた。今年の初物だ。こんな早い時期に撮影できるとは思わなかった。藤原岳は北斜面からの登山道が一般的だから、花の時期は遅れて当然か。それに比べこの孫太尾根は東斜面だから温かく、花の時期も早いのだろう。

 いよいよ奥村さんの地図にも書かれている難所にさしかかった。予定通り始末の悪い灌木帯に突入だ。どうやらミカン科のコクサギ(小臭木)らしい。根元から分枝しているので、まったく行儀が悪い。おまけに足下は大きな角のとがった石灰岩がゴロゴロしている。先を見てどうルートをとるかが問題だ。逃げて南西斜面に寄りすぎると落ち込んでいるので危険である。
 しばらく我慢して進むと見晴らしのよい所に出た。左前方に雪を乗せた銚子岳と静ケ岳がいい角度で見える。目測で約800メートル付近から雪があるみたいだ。そうだとするとこのコースでは草木あたりから雪を踏みそうだ。
 足下にセツブンソウが出始め、すぐ丸山の登りだと言うことがわかる。等高線の混み具合を見ると、傾斜が予想できる。見上げると壁のように行く手に立ちはだかっている。標高差は100m近くあろうか。やはり楽をして花を見させてはもらえない。
 足下さえよければ急な登りもあまり苦にならないが、ここの場合はルート探しが大変だ。灌木の茂るむき出しの大きな石灰岩地帯の登りはハードである。


静ケ岳、銚子岳


 徐々に傾斜がゆるくなるにつれ、セツブンソウが目立ち始めた。丸山のピークに期待が膨らむ。セツブンソウも咲いている。ザックをおろし一息入れる。今日の目標はこの丸山にあった。時間を気にせずに撮影に入る。少し時期が早いとは思うが、よくセツブンソウが咲いている。アングルファインダーの取り替え、100mmマクロで花と同じ高さから良い構図を捜す。きょうはセツブンソウだけでいい。撮影が終わるり満足感に浸る。


丸山


丸山に咲くセツブンソウ


 さて、これからまだ先がある。気持ちを切り替えて先を急ぐことにする。時刻はもうすでに11:30分を過ぎている。折り返しには2時間はたっぷりとかかるので、昼食時間も含めて14:00には折り返してこなければならない。さて、どもまで行けるか。北斜面のルートは雪がある。ミスミソウの葉を見つけたが花はまだのようだ。所々にフクジュソウがさいている。やはり花が豊かだ。


フクジュソウ(丸山からその先に尾根にかけて)


ミスミソウの葉


オモトの実


 快調に尾根を進む。藤原岳の石灰岩採掘現場で発破作業が始まるようだ。サイレンが鳴り響いたあとで爆破音が腹に響き、轟音とともに土砂が斜面を流れる。我々の暮らしの代償に山が削られていく様を目の当たりにすると、複雑な心境になるものだ。
 正面に樅(もみ)の木が現れた。痩せ尾根の中心に立ちはだかるようにそびえている。存在感がある。これに気づかぬ登山者はいないだろう。大きなブナの木もあった。


ブナ


尾根のルート


 草木を過ぎ、P965をめざす。積雪のため徐々に速度が落ち始める。丸山の登りほどではないが、結構傾斜がきつい。何度も立ち止まり肩で息をする。なんとかP965に到着した。黄色のプレートに多志田山と書いてある。樹間から藤原岳山頂が見える。標高差は150mほどだが、何度も県境稜線は通っているので、傾斜が半端でないことはわかっている。時間は13:20だ。大貝戸に車が置いてあると、山頂まで行けるのだが。昼食時間を差し引くと、制限時間だ。


P965(多志田山)


 南西斜面に雪の無いところを見つけ腰を下ろす。湯を沸かしカップ麺にありつく。少し風とガスが出てきた。そろそろ帰ることにしよう。自分のつけた踏み跡を見ながら尾根を降りる。踏み跡は終始自分のものだけだったが、草木からP965の鞍部で他の踏み跡がいったん現れて消えていた。それにたき火の跡が2カ所ほどあった。猟に入った人のものだろう。しかし、この鞍部にはどのように上がったのだろうか。地形図を見ても答えが見つからない。
 下山は丸山手前までは快調だったが、ここで尾根をひとつ間違える。北東に張り出した尾根を降りていることに気付く。藤原岳の採掘現場がどんどんと近づいてきたのでおかしいと思った。トラバースしてショートカットしようと獣道に入ったのが間違いだった。堂々巡りをしてしまい元の位置にもどった。30分のロスタイム。ここで予備の時間を使ったことになる。降りてきた尾根まで戻り、磁石で向かうべき方向を確認する。現在位置さえ見失わなければ大丈夫だ。
 丸山の急斜面を浮いた石灰岩と共に滑り降りる。またいやな灌木帯に突入した。植林帯の方にトラバース道がある見たいなので、つられて入ったのはいいが、これまたひどいブッシュだ。あえぎながらなんとか通過した。
 また尾根を間違いそうになる。P387の手前で南に張り出した尾根に乗ってしまうが、展望が効いたために直ぐに修正する。ところがP387からの下りがまたおかしくなってしまった。植林帯なので展望が利かず、磁石での確認を怠ったのが間違いであった。もう少しというところで方向を間違い、一本北の林道に降り立った。引き返した方が早いだろうとは思ったが、薄暗くなってきていたので、そのまま林道を降ってしまった。車まで戻るのに1時間かかってしまったことは大きな誤算だった。アスファルト道を歩いたので左足首を痛めた。下山は迷いやすいことを改めて悟った一日だった。しかし、たくさんの花と出会え、一足早い春を満喫できたのはよかった。帰りにハリマオさんに地図を返す。まじめに仕事をしていました。

 隊長さまの詩を漢字に置き換えたのを、中国からの留学生(医学部)の方に見て頂きました。その方は文系ではないので漢詩はわからないが、一般的に詩を置き換えるには、
 その詩の意味から一番美しい響きのある言葉を選んで置き換える。
 同じ意味の言葉でも日本と中国では違う漢字を使う場合が多くある。
とおっしゃいました。そして文学的にはどうか分らないが、文法的にはこうなると直して下さいました。 (郎女様より)

恋慕冬御池       冬の御池に恋い焦がれ
空虚夢醒時       はかない夢がさめるとき
脚下雪割草       足下に咲くミスミソウ
予感巡春季       季節はめぐり春の予感


阻行小臭木       行く手を阻むコクサギが
勇敢挑戦我       我に挑む勇ましさ
歓喜被試練       ありがたき試練に喜びて
優如節分草       セツブンソウの優しさや


踏雪孫太尾       残雪踏みしめ孫太尾根
樅木阻我行       行く手を阻む樅(もみ)の木が
歓喜来迎我       我を迎える嬉しさや
御背嚢飲水       ザックを降ろし水を飲む


誇福寿草開       フクジュソウ咲きほこり
慕山藤原岳       山を慕いて藤原の
山男仰峰也       峰を仰ぐ山男
知暁花之情       花の情を知るものぞ


春花開我前       我先に咲く春の花
潔良開花式       いさぎよき咲き方に
山男恋慕也       恋してしまう山男
薄命優美哉       はかない命は美しい

 

 

 

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