9:00 坂本谷
坂本谷はすごく危険でした。今年の夏の土石流で、跡形もなく登山道が
なくなっていて、大きな石があちに散らばっています。谷の両サイド も何かのはずみでいつでも崩れる状態です。危険と判断したひとりの登山者が引き返してきました。風貌からすると、山の怖さを知っている人のように見えました。忠告本当りがとうございます。登山隊としてはこの谷にはすごく思い入れがあり、現状を自分の目で確かめたかったので、落石に注意しながら白瀬峠をめざして進みました。落石がいつくるかも分からないので、常に身を避ける場所を確認しながらの谷を登ります。

ところが、福寿岩のあたりまで来ると(冷川谷出合までの中間点)、左サイドからいつ落石があっても不思議ではないほどの傾斜になっています。現にトラバースの最中に大きな音を立てて落石がありました。おまけにこのあたりは両サイドが迫ってきていて、落石があっても逃げる場所がありません。登山口で出会った登山者もここで断念したのかもしれません。(この登山者とは藤原の避難小屋で再会しました)
われわれ登山隊(今日はふたりだったけど)も、福寿岩を越えることを断念しました。しかし、ここまで来て帰るのは、本当に勇気がいりますね。
そこでこの箇所をトラバースする事にしました。左サイドを見上げるとかなり急な登りです。しかも、浮き石が多く足場も悪い。山歩きの達人であるカモシカ君やシカ君が何度もスリップした痕跡が生々しく残っています。中高年の登山学で学んだ三点確保は絶対に怠ってはいけません。御在所の新道にも急な登りのところが何カ所かはあるのですが、なんと言ってもあそこは登山道です。しかし、ここは登山道ではないのです。獣道しかないのです。こうなったら、信頼できるのは自分の力と技術だけです。とにかくガレを高巻ける高さまで高度を上げました。ところが険しくて横に進めないのです。上を見上げると尾根が近くまで来ているようです。
こうなったら尾根に取り付くしかないでしょう。
10:45 尾根に取り付く(坂本谷の藤原側)
谷から約1時間で尾根に出ることができました。ところがここは登山道でもなんでもないのです。雪の上には獣の歩いた後はあるのですが、人の存在は全く感じられません。地図を開き現在位
置と、この尾根が縦走路までつながっているのを確認し、高度を上げていきました。

福寿岩の登りついた尾根
11:10 ひたすら尾根を登る


尾根を登る体長
とにかく白瀬峠ー藤原の縦走路に出ることです。地図の等高線を頼りに尾根を上り詰めていきます。雪の上には、カモシカや鹿の歩いた後が無数に残っています。このことは自然の豊かさの証なのかもしれません。ピークが近づくにつれ行きも深くなってきました。といっても、20センチくらいかな。凍結してなかったのでアイゼンは必要なく、ラッセルまでもいたりませんでした。
福寿岩から尾根に張り付いてからやく1時間30分で縦走路の苔むしたカルンフェルトが点在するあたりにでることができました。登山道をはずれてあるくのも、冒険心をくすぐられていいものです。
12:25 天狗岩分岐
縦走路に出てから約30分で天狗岩分岐に到着しました。まともに白瀬峠まで行っていると、ここまで4時間はかかっていたのに、結果
としては1時間のショートカットをしたことになります。

12:40 藤原岳避難小屋
やはり冬場は小屋に限りますね。穏やかな天気ではあっても、山頂は気温は結構低いものです。日が出ていれば雪の上でもいいのですが、この日はあいにく天気が良くありませんでした。副隊長特製に豚汁はごっつうまか!三人分のあっという間に二人でたいらげました。

副隊長特製の豚汁(ごっつうまい!)

至福の時をむさぼる副隊長
15:00 無事下山
1999年度もこの登山で幕を閉じます。今日は新しいルートも開拓できたし、豚汁も食べられたし、しめくくりにふさわしい登山となりました。隊員のみなさま!来年もがんばりましょう!
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